フリーライターの小林なつめです。
専業主婦に対する個人的な見解
以前「社会保険適用拡大でどう変わる?「扶養の範囲」と「キャリア」の狭間で悩むなら」という記事で、社会保険適用拡大によって発生する「働き損」への対処法について取り上げた。記事内で私は、お金よりもキャリアを優先してはどうかという提案をしている。
また「「専業主婦」は、もはや絶滅寸前!?これからを生きる若い女性の考え方とは」という記事では、専業主婦志望の若い女性が減ってきている現状について書いた。
私自身は、「働くことが好き」というシンプルな理由から、人生においてキャリアを楽しみたい、なるべく持続させたいと考えている。だから、結婚後や出産後も、働き方を変えつつ、なんとかキャリアを途切れずに続けてきた。
しかし一方で、専業主婦にネガティブな感情を抱いてはいない。私自身、専業主婦だった母親に育てられ、幸福な子ども時代を過ごさせてもらったからだ。
とはいえ、共働き世帯が全体の7割以上を占めている現代においてなお、「専業主婦ありき」の社会構造が残っているのは、社会的な問題だと感じる。いっそ欠陥といってもいいだろう。なにしろ無理があるのだ。
ここからは、実際に生じている3つの問題を紹介していく。
ケース1 性別役割分業という考え方
例えば、共働きの家庭であっても、今なお母親ばかりに負担がかるのは、「家事や育児は母親の仕事だ」という、かつての「専業主婦ありき」の社会構造が残っているからだ。
なかには専業主婦の妻がいる上司に、共働き家庭の実態を理解してもらえないケースも多いという。子どもが発熱して、男性社員が「子どものお迎えで早退します」と報告しても、上司は「なぜ君が?奥さんに行かせればいいじゃないか」としか考えられないのだ。
ケース2 転勤制度
日本特有の風習?だという転勤制度も、「専業主婦ありき」の社会構造の1つだ。専業主婦が当たり前だった時代では、妻の仕事に関する問題が発生しないため、基本的には帯同される場合が多かったのではないだろうか。
しかし、共働きが過半数の現代でもなお、共働き家庭にも、容赦なく転勤の辞令は下りる。共働きで、転勤となった夫や妻に同行する場合、夫か妻のどちらかは退職などの措置を取らざるを得ない。
かといって、単身赴任という選択は、そう簡単にはできない。2人で手分けすることで成り立っていた仕事や家事・育児を、いきなり1人でこなすのは、あまりにも現実的ではないからだ。
ケース3 地域・社会活動
問題は、家庭や職場に留まらない。自治会や町内会、子ども会などの地域活動や、小学校のPTA活動も、「専業主婦ありき」で今なお残る社会構造の1つだ。
子どもを育てながら仕事をしていると、地域活動やPTAの役員の仕事をこなすのは困難だ。まず、会議が行われるのは日中昼間であることが多く、参加すらままならない。当番などにも、子育て世帯が有休を取ってまで参加するのは、非現実的だ。
40年で半減した、専業主婦の女性たち
このように考えると、日本社会の発展は、専業主婦の女性たちが支えてきたのだということを実感する。「働いている方が偉い」という価値観がまかり通る社会で、家事、育児を一手に引き受け、社会活動にも取り組んできた専業主婦の方々は偉大で、頭が上がらない。
しかし現代社会では…かつてのような専業主婦層は、すでになくなっている。なにしろ、1980年に1100万人以上いた専業主婦は、今ではその半数以下にまで減っているのだ。
出典:労働政策研究・研修機構(JILPT)「図12 専業主婦世帯と共働き世帯」
それなのに、専業主婦がいること前提の社会構造を維持しようというのは、土台無理な話だ。「専業主婦はもういない」ことを前提とした、枠組みの見直しが急務だろう。
【参考】
■ 『なぜ共働きも専業もしんどいのか 主婦がいないと回らない構造』 ( PHP新書 1190 )中野 円佳著 PHP研究所 2019.6
■ 育児や介護などのケア労働は、労働の中で特殊なものではない – 國學院大學
■ 転勤で引き裂かれる家族、失う仕事、こんな社会でいいの? | Business Insider Japan
■ 「専業主婦ありき」で社会ルールがつくられている日本の問題点 ドイツとの違い – wezzy|ウェジー