どうすれば家事の分担がうまくいく?「家事は面倒なもの」だというバーゲニング理論

どうすれば家事の分担がうまくいく?「家事は面倒なもの」だというバーゲニング理論

どうすれば家事の分担がうまくいく?「家事は面倒なもの」だというバーゲニング理論

フリーライターの小林なつめです。


日本人は、家事がお好き?

日本人は、よほど家事が好きなのだろう。

例えばここ数年は「丁寧な暮らし」たるライフスタイルが人気だ。家づくりや収納術では「ホテルライク」が流行しており、SNSには、モノが整然と収納されたキッチンや、床にモノ1つないリビングなどの画像があふれている。

これらはどれも、インフルエンサーなる、ごく一般家庭の人々が投稿しているもので、それが現代のライフスタイルの主流として、見る側に受け入れられていると分かる。

これらの暮らしを実現・維持するためには、とにかく手間と時間がかかるが、家事に手間と時間をかけることは、日本では「美徳」とされる傾向にあるので、親和性が高いのだろう。

 

バーゲニング理論では、「家事はできればやりたくないもの」

しかし、経済学者が家事行動を分析した、アメリカのバーゲニング理論では、「家事はできればやりたくないものだが、家庭生活を維持するためにある程度はやらざるを得ない」ものとして、定義づけられている。

日本人の中にも「家事はできればやりたくない」と思っている人は多そうだが、それを表立って主張するのには、どこか憚られる空気がある。バーゲニング理論は、日本人のそういった価値観を、粉々に打ち砕いてくれる。

私自身、この理論を知ったとき、「やりたくないって言っていいんだ」と、少しほっとした。

バーゲニング理論は、さらにこう続く。「その配分は、家庭における資源の割合に準ずることが多い」…つまり、家事は家庭内ですべてを完結させる必要はなく、手持ちの資金に応じて外注するのが基本。外注できない部分を、家庭内で負担するというイメージだ。

こういった考え方からも、海外(アメリカ)と日本の、家事に対する根本的な考え方の違いが分かる。

前述した通り、日本では「家事に手間と時間をかけること=良いこと」という認識がある。

日本人にとって、家事の手抜きや外注化は、非日常的なものだ。日々の家事を一通りこなせているのは前提として、時折得られるご褒美的なものに過ぎない。

 

日本人の「家事好き」は政府による刷り込みによるもの?

こういった日本人の感覚について、『「家事のしすぎ」が日本を滅ぼす』の著者である佐光氏は、政府が発信してきた「伝統的な家事の在り方」を美化するようなメッセージによる、刷り込みがあるのではないかと分析している。

政府は戦後から長い間、「家事は「きちんと」やらないと家庭機能が低下する、子どもがちゃんと育たない」というメッセージを発信し続けてきた。

そこには「女性の家庭内の無償労働を、いくらでも使える資源と位置付けてきた、戦前の経済体制を維持したい」という、政府の思惑があったのではないかと推測している。

日本人が「家事を美徳」とする感覚の裏側に、国の思惑があったのだと考えると、「それならスルーして構わないんだ、何なら後世のためにはスルーした方がいいのでは?」という気持ちにすらなる。

 

時代や家庭の在り方は大きく変化したにもかかわらず、いまだ多くの家庭で女性の無償労働によって、家事の大部分が担われている。

これは、今も根強い「家事を美徳」とする感覚や「家事は女性がするもの」という、旧態依然な価値観からくるものだろう。

家事が「手抜き歓迎、外注OK」な時代になれば、女性たちは今より自由に生きられるようになるはずだ。

 

【参考書籍】
『「家事のしすぎ」が日本を滅ぼす ( 光文社新書 917 )』佐光 紀子著 光文社 2017.11
『主婦をサラリーマンにたとえたら想像以上にヤバくなった件』河内 瞬著 主婦の友社 2019.1

【参考サイト】
■ 「家事はきちんと」なんて無視してもいい なぜ外注を「悪」と考えるのか | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)
JGSS データ 2006 を用いた共稼ぎ夫婦の 家事労働行動に関する実証分析|安 藤 潤  新潟国際情報大学 情報文化学部 紀要

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