「早寝早起き朝ごはん」運動への疑問…「きちんとした朝ごはん」は子育て家庭に必要か?

「早寝早起き朝ごはん」運動への疑問…「きちんとした朝ごはん」は子育て家庭に必要か?

「早寝早起き朝ごはん」運動への疑問…「きちんとした朝ごはん」は子育て家庭に必要か?|リアンブルーコーチング舎フリーライターの小林なつめです。

 

「早寝早起き朝ごはん」運動について

「早寝早起き朝ごはん」運動を知っているだろうか。多くの人が、一度は耳にしたことがあるのではないかと思う。

この朝ごはんキャンペーンは、2006年に「早寝早起き朝ごはん」全国協議会の発足をきっかけに始まった。

農林水産省と文部科学省が主体となり「家庭における食育の推進」という名目で進め、国民運動として全国のさまざまな分野に波及、拡大した。

 

朝ごはんの摂取は、学力に影響を及ぼすのか?

全体として「健康のためには手作りの朝ごはんが欠かせない」といった論調で、国は「朝食摂取と学力に因果関係がある」というデータまで示している。https://www.mext.go.jp/kids/find/kyoiku/mext_0020.html

実は私は、このデータに関しては眉唾物だと思っている。なぜなら私自身、小学校の高学年から大学生になるころまで、ほとんど朝食を食べない生活を送っていたからだ。

そんな私でも、受験では最善の結果を残した。普段から朝食を食べないのだから、受験当日の朝食も、当然食べずに試験を受けたが、それでも試験で悪い結果は出なかった。

時折「あのころ朝食を取っていれば、もっと上の学校に入れたのでは…?」という考えが首をもたげるが、実際問題「そんなことはありえない」と思う。

「朝食を取っているかどうかが、学力を左右する」とは到底思えないし、冷静に考えると、突飛な考え方だとすら思える。

 

「きちんとした朝ごはん」は、本当に必要か?

とはいえ、そんな私でも「朝食は取らないよりも、取った方がいい」ことくらいは分かっている。理論上、「朝ごはんから栄養を摂ると、脳が活性化する」という説は正しいのだろう。

しかし、だからといって「きちんとした朝ごはん」が、本当に必要なのだろうか。

「きちんとした朝ごはん」というと、「炊き立てのご飯に温かい味噌汁、卵焼きや焼き魚、お浸しやお漬物」のように、主菜と副菜を組み合わせた「THE和食」なラインナップが思い浮かぶ。

しかし、子どもを抱えて仕事をする共働きの両親が、朝からその食事を用意するには、どれだけの労力が必要だろう。人によっては睡眠時間をも、削らなければならないはずだ。

果たして、本当にそこまでして「きちんとした朝ごはん」を用意する必要はあるのだろうか?

私は「きちんとした朝ごはんを作って、子どもに食べさせることこそ親の使命」たる主張や、それを「一般論」にしようとする風潮に、違和感を覚える。

こういった主張がまかり通ることは、親への要求を1つ増やすことになるからだ。

「きちんとした朝食を取らせない親=ダメ親」という見方は、少子化に拍車をかけかねない、悪しき価値観の1つだといえるだろう。

 

「きちんとした朝食」の必要性を探る

そもそも日本で「きちんとした朝食」を食べる習慣が始まったのはいつなのか。

『「家事のしすぎ」が日本を滅ぼす』によると「朝ごはんが温かいというのはごく最近の日本で起きたこと」だという。

ひと昔前までは、食事の度にご飯を炊くことはなかった。朝食の定番は、前日に炊いた冷やご飯の、お茶漬けや卵かけだったのだ。

それなのに「早寝早起き朝ごはん」全国協議会では「主菜、副菜を取り入れたバランスのとれた食事」すなわち「きちんと用意した食事」を推奨している。

日本の「きちんとした朝ごはん」への執着具合は、海外の朝食事情と比べると、さらに明確だ。

フランスの「カフェオレとクロワッサン」というシンプルな朝食スタイルはよく知られているが、ヨーロッパやアメリカの朝食は、手間のかからないパンやクラッカー、シリアルが一般的だ。アジア圏では、家を出てから屋台で朝食を取るスタイルが主流の国も多い。

つまり「きちんとした、温かい朝ごはん」は、日本独自の由緒正しい歴史や文化があるわけではなく、国が先導して取り入れた、現代的な新しい価値観に過ぎない。

さらに、海外の簡素な朝食を見ると、「きちんとした朝食」の重要性は、そこまで高くないと分かる。むしろ国を挙げての「早寝早起き朝ごはん」運動に、違和感さえ覚えるほどだ。

 

「早寝早起き朝ごはん運動」の弊害

今の日本の家庭における問題は、「きちんとした朝ごはんが食べられず、学力が落ちる」ことではない。

きちんとした朝ごはんを食べさせなければ、良い家庭、良い親として認められない」という、同調圧力にあるのではないだろうか。

国の中枢にある人たちは、「きちんとした朝食の出る家庭」を「良い家庭」とする価値観を定着させたいのだろう。

しかし、この価値観は、子どものいる家庭にとって、あまり意義のあることとは思えない。むしろネガティブな影響の方が大きいのではないだろうか。

 

【参考】

『「家事のしすぎ」が日本を滅ぼす ( 光文社新書 917 )』佐光 紀子著 光文社 2017.11
早寝早起き朝ごはん全国協議会
「早寝(ね)早起き朝ごはん」って知ってるかな?:文部科学省
早寝早起き朝ごはんは、子供の学力にほぼ無関係|NEWSポストセブン

 

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