フリーライターの小林なつめです。
どんな行為が「セクハラ」か知らない女性が多い?
2020年、厚生労働省の「職場のハラスメントに関する実態調査」によると、「過去3年間に勤務先でセクハラを経験した」と答えた人は、全体のうち、たった10.2%だったという。私がこの数字を見て思ったのは「さすがに眉唾過ぎる…」だった。
恐らく、調査対象となった人たちは、「セクハラ」がどういうものかを正しく認識しないままに「経験していない」と答えているのではないだろうか。
地域や環境が変われば「セクハラ」も変わる
「女性へのお酌の強要もセクハラ」だと知っていれば、地方で働く女性のほとんどがセクハラを経験しているだろう。大学を卒業してからたった2年間、地方で働いただけの私ですら、その1人だ。
「お酌の強要」というと、上司やお偉方から「そこの君、グラスが空だぞ」とあからさまにお酌を指示されるような図をイメージするかもしれないが、実際にはそうではない。
例えば私の場合は、忖度と同調圧力によるものだった。上司が直接言ってくるわけではなく、女性の先輩が、若手に指示するのだ。「さあさあ、あなたたち、◯◯課長にお酒をついできて」と。席次も、若手は上司の隣に座ることが義務付けられていた。
当時、社会人2年目だった私は、時代錯誤な光景に違和感を覚えつつも、「そういうものなのか…」とその言葉に従った。しかし、その時感じた違和感は、のちに嫌悪感に変わり、お酌どころか飲みの席自体を避けるようになった。
そのわずか2年後、東京の職場で行われた飲みの席では、お酌ルールはなく、席次はくじ引きだった。地域によって、こんなにも飲み会の雰囲気が違うのかと、驚いたものだ。
日本における「#MeToo」運動
さて、セクハラといえば、2017年、アメリカを皮切りに世界に広まった「#MeToo」運動が印象的だ。残念なことに、日本では、セクハラの告発者に対する中傷や報復が酷く、海外と比べると、発信する女性が少ないといわれている。
さらに新聞社やテレビ局などのマスメディアで働く女性の比率が約2割しかいないことも、大きな原因だと考えられる。女性比率が低い組織では、「男性中心の同質性を高める」リスクが生じる。結果、女性の被害者が多いセクハラについては重要視されず、取り上げられない。
それでもここ数年、日本でも各業界の団体(メディア、映画、劇団など)関係者による、セクハラの告発が相次いでいる。
セクハラ行為の厳罰化は日本社会を変えるか
そんななか、2023年2月に、驚きのニュースが飛び込んできた。パナソニックの傘下でIT事業を手掛ける「パナソニックコネクト」で、セクハラに関するガイドラインの厳罰化を決定。セクハラ行為が1回であっても「即降格」処分とすると定めたのだ。
ガイドラインの内容や運営方法、実際の対応が気になるところではあるが、それでもセクハラに毅然とした態度を示した点は、とかく先進的だ。会社が厳罰化を決め、セクハラに対する確固たる姿勢を示したという事実だけで、セクハラ被害者は心強く思うだろう。
今後の日本の、ますますのセクハラ・アップデートに期待したい。
【参考URL】
◆ 1回でもセクハラ「即降格」に パナソニック傘下コネクトが導入(共同通信) – Yahoo!ニュース
◆ 相次ぐ米国セクハラ告発 “沈黙”破った人々の本音 | ニュース・リポート | 東洋経済オンライン | 社会をよくする経済ニュース
◆ 日本の #MeToo:沈黙を破り始めた女性たち – BBCニュース