「管理職の女性はセクハラを受けやすい」!?リーダー職の女性を待ち受ける困難

「管理職の女性はセクハラを受けやすい」!?リーダー職の女性を待ち受ける困難

「管理職の女性はセクハラを受けやすい」!?リーダー職の女性を待ち受ける困難|リアンブルーコーチング舎

フリーライターの小林なつめです。

 

管理職の女性の方がセクハラを受けている

セクハラの被害者というと、若く、社会経験の短い女性のイメージがないだろうか?でも実際には、管理職の立場にある女性の方が、そうでない女性よりもセクハラを受けているという。

2020年のセクハラに関する国際比較調査によると、調査対象となった日本と米国、スウェーデンの3カ国とも「非管理職の女性に比べ管理職の女性の方がセクハラの被害を受けることが多い」という結果が出ている。

(参考:セクハラの国際調査、被害受けやすい管理職女性

つまり、経験が長く、社内である程度の地位に就く女性の方が、セクハラに遭いやすいというのだ。さらにセクハラを告発した場合、報復に遭いやすいのも、管理職だという。

(参考:PJ002_女性管理職とセクハラ | ソーシャルアクションタンク

また日本では「セクハラの経験があるか」という問いに対して、主観で「ある」と答えた人の割合は、管理職で25%、非管理職で13%だった。

一方で、より具体的なケースを示した、客観的指標に基づく回答では、「ある」と答えた人の割合が管理職で68%、非管理職で52%であり、被害者の多くが、「セクハラを受けているにも関わらず、そうと認識していない」傾向にあることも、分かっている。

以前の記事「令和日本の「セクハラ・アップデート」の実際」で、2020年に行われた厚生労働省のセクハラに関する実態調査についてふれた。その調査では、「過去3年間に勤務先でセクハラを経験した」と答えた人が、全体のたった10.2%しかいなかった。私はその結果を疑わしく感じたのだが、実際、この感覚が間違っていなかったと分かる。

 

女性政治家の多くがセクハラを受けた経験がある

政界の女性リーダーたちも、憂き目に遭っている。

内閣府「女性の政治参画への障壁等に関する調査研究報告書」によると、「女性の政治家を増やすために有効な取組」として、57%の女性議員が「ハラスメント対策」を挙げている。

民間企業などでハラスメント対策が進む一方、女性候補者や議員に対する手立ては、まだ手付かずという実態がある。特に地方議会において、女性議員は激しいセクハラにさらされている。

例えば南日本新聞が2021年3月に鹿児島県内の女性議員に対して行ったアンケートでは、全74人中41人(全体の55.4%)が、セクハラ被害の経験があると答えている。

(参考:女性議員全74人中41人セクハラ被害 同僚、有権者らから関係強要や蔑視発言 国際女性デー・県内アンケート | 鹿児島のニュース | 南日本新聞 | 373news.com

静岡新聞が2021年1月に静岡県内の女性議員に行ったアンケートでは、回答者98人中、32.7%が、「セクハラ被害の経験がある」と答えた。

しかし「その他」を選んだ6.1%の議員には、「選挙のためにある程度仕方ない」「当人にはそのつもりがない」などの回答も見られた。すなわち、セクハラをセクハラだと認めない議員もいるのだ。この事実も踏まえると、実際には、より多くの議員がセクハラを経験していると予想できる。

(参考:セクハラ被害、女性議員3割強【静岡県議、市町議員アンケート㊦】|あなたの静岡新聞

 

女性リーダーがセクハラの標的になるのは「数が少ない」から

「議員とセクハラ」という話題で思い出すのは、2014年に都議会で起きた「セクハラやじ問題」だ。塩村文夏議員が、妊娠や出産に関する女性への支援策について質問中、「自分が早く結婚した方がいいんじゃないか」「産めないのか」などと、鈴木章宏議員(ら)から、セクハラやじを飛ばされた。議場では同調の声や笑い声も上がったという。

議会におけるセクハラ行為は、このように時折ニュースとして耳に入るが、当事者にとっては、「ニュースにもならない日常の出来事」として蔓延しているであろうことが想像に難くない。

なぜ、管理職や女性政治家などの女性リーダーは、セクハラを受けやすいのか。その答えは単純明快だ。それは「女性リーダーが少ないから」

前述した、都議会のやじ問題でも、女性なら誰しもが眉をひそめるような、悪質なやじに同調する空気が生まれたのは、そこにいた多くの議員が男性だったからだろう。

塩村議員の発言が罵られ、笑われたのは、ホモソーシャル(男性同士の絆、連帯感)によるミソジニー(女性嫌悪)にほかならない。彼女の勇気ある質問は、議場における男性議員同士の絆を確認し、連帯感を高めるための、犠牲とされたのだ。

つまり、管理職へのセクハラをなくすためには「女性リーダーを増やす」ことが必要不可欠だということだ。現状、「女性リーダーを増やす」というと、「女性は昇進を避ける」「女性の意識に問題がある」といった、女性個人に対する否定的意見が少なくない。しかし社会の状況が変わらない限り、女性個人が変わることは困難だ。まずは女性リーダーの「数を増やす」こと、それ自体が肝要なのだ。

 

【参考URL】

政治家のセクハラ・マタハラ防止へ 地方議員の被害をもとに政府が動画作成 野田聖子担当相「私も酒席で体中触られた」:東京新聞 TOKYO Web
https://www.asahi.com/articles/ASP6J5QYMP6JULFA01L.html
日本政界の性差別に立ち向かう……東京・杉並の女性区長 – BBCニュース
10%に満たない女性管理職 なぜ「上」に行けないのか:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(1/5 ページ) – ITmedia ビジネスオンライン
東京都議会やじ問題 – Wikipedia
男性議員や有権者からセクハラ被害、憤る上川管内の女性議員「現実は下に見られてる」:北海道新聞デジタル

 

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