言葉の表現について|「お母さん食堂」炎上を例に【ジェンダー表現を考える①】

言葉の表現について|「お母さん食堂」炎上を例に【ジェンダー表現を考える①】

言葉の表現について|「お母さん食堂」炎上を例に【ジェンダー表現を考える①】|リアンブルーコーチング舎

フリーライターの小林なつめです。

 

ジェンダー表現って?言葉の表現を紹介

ジェンダー表現とは、ジェンダー的に偏りの見られる表現のこと。「男性・女性は、こういう性別だ」というステレオタイプに染まった表現を指す。

例えば言葉の表現でいくと、以下のような言葉がジェンダー表現に当たる。

・女医…職業を示す意図なら「医師」で十分

・男泣き…「男」をつける必要がない

・女々しい…「女性」を蔑む性差別的表現

・女性ならでは…「女性らしさ」の押し付け

これらの言葉は、これまで、新聞やテレビなどのメディアで当たり前に使われてきた。近年、ジェンダーへの社会的関心が高まったことから、減ってきてはいるが、いまだに目にすることがある。

 

ジェンダー表現の見直しが必要な理由

「なぜジェンダー表現の見直しが重要なのか」…それは、ジェンダー表現を減らすことが、男女平等の実現につながるからだ。

私たちはジェンダー表現を繰り返し目にし、耳にすることで、知らず知らずのうちにジェンダー的価値観を刷り込まれる。その積み重ねは、無自覚のうちに、人々の社会的な価値観、ものの考え方に影響を及ぼす。

「単なる言葉の使い方」かもしれないが、言葉の力は私たちが考えているよりも、ずっと大きく、重い。繰り返されるジェンダー表現は、人々の固定観念となり、性差別や性的偏見、すなわち「ジェンダー・バイアス」を強化してしまうのだ。

 

ジェンダー表現の見直しは「言葉狩り」に直結するのか

「ジェンダー表現をなくそう」という話に対して、「それは言葉狩りではないか」という反論を、よく見聞きする。

この反論は、「ジェンダー観のアップデートが望ましい」という論調が主流となってきている最近でも、メディアはもちろん、インターネットやSNS上で、今もよく目にする。

例えば「お母さん食堂」の炎上騒動がある。これは、ファミリーマートの惣菜シリーズ「お母さん食堂」の名称変更を求めて、2020年に高校生たちが行った署名活動だ。SNS上では「言葉狩りだ」という批判コメントが相次ぎ、炎上騒ぎとなっていた。

前提として、「お母さん食堂」というネーミングは、「お母さん=炊事係」という、性別分業制をイメージさせる明らかなジェンダー表現だ。違和感を覚えて声を上げた、高校生の考え方には筋が通っている。

「言葉狩り」には、以下のような意味がある。

特定の言葉を、差別・偏見を含み不適切だとして、過剰に排除すること。多く、差別・偏見そのものについて熟考や議論をせず、その言葉を画一的に排除したり、使用を自主規制したりすることを批判していう。 小学館「デジタル大辞泉」より

たしかに彼らは、「特定の言葉を」「排除」しようとした。しかしそれは「過剰」だっただろうか。彼らは「差別・偏見そのものについて熟考や議論をせず」「言葉を画一的に排除」しようとしたのだろうか?

そんなことはないだろう。そもそもジェンダーやフェミニズムに関する話題が簡単に炎上するこの世の中、高校生がネット上で発言するリスクの大きさを知らないとは思えない。安易な気持ちで活動を始めたわけはないだろう。

さらに彼らは、ガールスカウト活動の一環として、ジェンダーや男女平等について学んだことがきっかけで、「お母さん食堂」のネーミングに疑問を持ったという。

彼らはきちんとした学習の機会を得たうえで、活動をしているのだ。「熟考や議論を」経て、活動を始めているため、「言葉狩り」の定義に当たらない。

以上の事実から判断して、この騒動は単なる「言葉狩り」ではなく、女性の人権に関する、ジェンダー表現についての重要な注意喚起だったといえる。

 

ジェンダー表現を判断するための簡単な方法

最後に、ジェンダー表現かどうかを判断する、簡単な方法を紹介したい。それは「表現内にある、男女の性別を入れ替えても違和感がないか」確認することだ。

例えば「お母さん食堂」の性別を入れ替えると「お父さん食堂」となる。「お母さん食堂」にはしっくりくるのに、「お父さん食堂」にはなぜか違和感を覚えるのなら、「お母さん食堂」は性別への偏見に基づく、ジェンダー表現なのだと分かるだろう。

 

【参考URL】

公的広報におけるジェンダー表現とメディア・リテラシー:日本広報協会
女々しいは差別語ですか? – Quora
ファミマ「お母さん食堂」の名前変えたいと女子高校生が署名活動、「料理するのは母親だけですか?」 | Business Insider Japan
「お母さん食堂」は本当にアウトなのか…モンスター消費者の”言葉狩り”が止まらないワケ あえて炎上する宣伝文句を選ぶ心理 | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)
ファミマ・お母さん食堂に異議 声上げた高校生に「慎吾ママ」生みの親がエール | 毎日新聞
キャンペーン · ファミリーマートの「お母さん食堂」の名前を変えたい!!! · Change.org
男女共同参画の視点に配慮した表現のガイドライン|山形県しあわせ子育て応援部 女性・若者活躍推進課
公的広報表現ガイドライン|青森県環境生活部青少年・男女共同参画課男女共同参画グループ

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