フリーライターの小林なつめです。
誕生日なのに夫にエイジズムの呪いをかけられた話
先日、私は35歳の誕生日を迎えた。誕生日の朝、夫の第一声は「誕生日おめでとう」ではなく、「アラフォーの仲間入りだね(笑)」だった…。
私は1つ年齢を重ねたことに、ネガティブな気持ちは一切ないし、年齢は記号だと考えているので、さほどこだわりもない。
けれど「女性は加齢を気にする」「女性にとって加齢はマイナス」「女性には期限がある」という、エイジズム的価値観を持って、故意に皮肉られると、さすがにいい気はしない。
夫はその後、子どもたちの前でも「ママはアラフォーになったんだよ(笑)」と、イヤな雰囲気を醸し出しながら連呼した。
自虐的発言で、自分と同じ属性の誰かを攻撃していないか
これはもはや、私ヘの嫌がらせに留まらない。子どもたちへのエイジズムの刷り込みにも、なってしまっている。
さすがにスルーできないと感じ、夫にそう指摘したが「俺たちは仲間内(女性含む)でアラフォーになったことをお祝いしあった」と誇らしげに返され、これぞ無自覚な「ホモソーシャル」だなと、頭を抱えたい気持ちになった。
仲間内での自虐は結構だが、その価値観をソトに持ち出して人を貶すのは違うだろう。
そもそも自虐的発言は、自分1人を貶めるものではない。自虐的発言は、自分以外の人を差別し、攻撃する言葉となるのだと、自覚して使わなければならない。
若い女性はなぜ「BBA」を自称するのか
エイジズムの自虐といえば、1つ気になっていることがある。
それはSNSでの「自称BBA」の若年齢化だ。ここ数年、20歳そこそこ、それこそアラサーと呼ばれる25歳以降になると、自分を「BBA(ババア)」と自称する女性が増えている。
とはいえ、「自称BBA」の女性たちが、本当に自分を「ババア」だと思っているかは疑問だ。
これは女性の防衛本能からくる、けん制による発言に過ぎないからだ。人から言われたくないからこそ、あえて自ら称することで、相手の先に立ち、自分の身を守ろうとしている。
このように女性が身を挺して、自分を守らなければならないのは、社会に「女性は若くなければ価値がない」というバイアスがはびこっているからだ。
女性は若くなければ価値がないという社会通念
かつて、女性の旬(結婚適齢期)は、クリスマスケーキになぞらえられた。24歳がピークで、25歳がラストチャンス、26歳以降は売れ残りで、価値がないと揶揄されていたのだ。
この例え話は、現代社会では死語となっていて、知っている人は少なくなっているかもしれない。「女はクリスマスケーキだから」と、表立って該当年齢の女性たちに言い放つような人は、そうそういないだろう。
しかし、この社会通念は、今も根深く残っていて、多くの人が口にはしないけれど「女は若いうちが華」「BBAに用はない」という価値観に毒されている。
時代は変わり、社会の価値観も変わり、周りから直接年齢について揶揄される機会は減った。それなのに、自ら「BBA」を称さずにはいられない、現代の若い女性の胸の内を考えると、息苦しくすらなる。
【参考】
■『#駄言辞典 早く絶版になってほしい』日経xwoman編 日経BP 2021.6
■「自称BBA」という怪物 – エデンの西の片隅で
■言われる前にけん制? 女性タレントによる自称「BBA」の心理 | ORICON NEWS