フリーライターの小林なつめです。
2023年6月21日、私が応援していた(今風の言葉でいうと「推していた」)、女性アイドルグループ「アンジュルム」の元リーダー、竹内朱莉さんがグループを卒業した。
本来女性アイドルというと、男性ファンがその多数を占めるのがスタンダードだが、アンジュルムは、女性人気の高い女性アイドルだ。私は毎年、年に数回のライブに参加しているが、体感として今や女性ファンは5割近い。
また、アンジュルムは時に「戦闘民族」や「武闘派」と称されるほど、熱く、力強いパフォーマンスで知られている。
楽曲も「現代をたくましく生き抜く、等身大の女性」像を描いていることが多く、以下のような歌詞が、女性の心をつかんでいる。
か弱き生き物と
侮ってちゃ 痛い目見るかもね
今すぐ 飛び出して
(「アイノケダモノ」作詞:西野蒟蒻 2023/6/14)
本当は君だって
完璧 目指すより
絶対的な自分であっていたいよね!
(「Sister Sister」作詞:児玉雨子 2023/3/22)
Wirelessの時代でしょ?
言わずもがな人間の感情もね
男なんかのわがままに 女はもう縛られない
(「赤いイヤホン」作詞:星部ショウ 2019/5/15)
このような要素から、私はアンジュルムのメンバー同士、そして女性ファンとの関係性に、シスターフッドに近いつながりを感じている。
今回はそんなアンジュルムの2代目リーダー、竹内朱莉さんのリーダーとしての姿を、私が感銘を受けた、3つのポイントを通して紹介する。
①自ら率先して仕事を楽しむ
雑誌「MORE」のWEBメディアのインタビューで、竹内さんは「私がリーダーとして大事にしているのは、いちばんふざけて、たくさん笑って、メンバーと過ごす時間を誰よりも楽しむこと!」と語っている。リーダーという役職に就いていても、他のメンバーと同じ目線で、仕事を楽しむことを大切にしていたのだ。
さらには「今でもメンバーには遠慮なしで意見を言ってほしいから、楽屋でカードゲームしたり、おしゃべりしたり、お仕事以外で一緒に過ごす時間を増やして、話しやすい雰囲気にしてる」とも話しており、自分が率先してメンバーとコミュニケーションをとり、上下関係による緊張感を和らげ、グループの雰囲気を良くしていたという。
私自身、仕事をするうえで「自分が楽しむ」ことを大切にしているので、こういった姿勢には共感した。私が仕事を楽しんでしたいと思うのは、自分が楽しむことで、仕事へのモチベーションが上がり、ポテンシャルも上げられるからだ。
竹内さんもそれを知っていて、自分はもちろん、グループ全体のモチベーションとポテンシャルを上げるために、努力していたのではないだろうか。
②悪い風習を残さず、後輩を守る
竹内さんの卒業を控えた最後の記者会見が、少し話題になった。詳細は「アンジュルム竹内朱莉「これは何の質問ですか?」報道陣に異例のお願い」の記事などに明らかだ。
経緯を簡単にまとめると、会見で、ある記者から「アンジュルムの汚れ役を一手に引き受けていた竹内がいなくなったら、その役目はどうなってしまうのか」と質問され、竹内さんが「別に汚れ役をやらなければいいだけの話じゃないですか。やりたければやればいいし、無理して苦しくなるくらいだったらやる必要はない。」と答えた。
さらに食い下がり、後輩にまで同じ質問を振る記者に、「これは何の質問ですか?もっと絶対に大事なのがある!絞り出してください。」と、声を荒らげたという内容だ。
「汚れ役」とは、いじられたり、体を張ったりして、場を盛り上げる人のことだ。現役当時、必要とあらば竹内さんはそれに近いキャラクターを演じていた。
しかしそれは、本人が望んでしたことだったのだろうか?リーダーとして、「無理をして苦しくなるくらいなら、誰も汚れ役をやる必要はない」と主張したということは、必要に迫られてしただけで、望んでしたわけではなかったのではないだろうか。
かつて自分が経験したツラい体験は、後輩に押し付けない。後に残したくない悪しき風習は、相手が誰であってもキッパリ拒否する。リーダーとしてあるべき姿だと感動した。
さらに竹内さんは「私が入った時はこうだった」とか「昔はこうだった」というふうに、自分しか知らないような話は、後輩にしないようにしていたという。
自分の頃とは違うところを後輩の中に見つけても、「今は今だから」、「その世代に合ったやり方をやった方が良い」と考えていたそうだ。
これもまた、変化や進化を厭わず、グループをさらなる高みに連れていくリーダーとして、理想的な態度ではないだろうか。
③リーダーだからと全てを抱えず、後輩の成長を促す
竹内さんは雑誌「MORE」のインタビューで「役割的にはリーダーだけど、大きな決断や困難はみんなで乗り越えていく。」と話している。
また、「アンジュルムの武器は個性の強さ。」としたうえで、「メンバーには、やりたいことや意見があればどんどん発言するように伝えています。それによって新しい発見が生まれるし、グループの可能性も広がる。メンバーと一緒に成長できることが楽しくて、うれしくもあるんです」とも。
リーダーだからといって、力強いリーダーシップを発揮してメンバーを引っ張るのではなく、チームワークを重視し、メンバーと共に成長していく。
これはまさに、以前別の記事「女性リーダーがチーム力を高めるには、今までのリーダー論ではダメだった?女性が目指すべきリーダーシップのスタイルとは」でも取り上げた、「サーバントリーダーシップ」のスタイルではないか。
さらに竹内さんはリーダー就任後、「今までは気づいたこと、思ったことを全部言っていたし、普通に怒ったりもしていたけど、それをわたしがしないからといってほかの誰かがやらない状況もまずい」と考え、あえて言葉にしない場面が増えたとも語っている。
リーダーでありながら、全てを抱え込まず、後輩たちの成長のために、あえて余白を残していたのだ。これもまた、組織全体の成長を目指す、サーバントリーダーシップのあるべき姿だ。
おそらく竹内朱莉さんは、「サーバントリーダーシップ」についての知識はなかっただろう。しかし、現代の組織におけるリーダーの在るべき姿を、肌感覚で悟っていたような気がする。
時代の最先端を行くアイドルグループにおいて、メンバーの人格や個性を尊重しながら適切なフォローやサポートを行い、アンジュルムの人気を押し上げた竹内朱莉さん。
メンバーから厚い人望を受けていたのはもちろん、一ファンである私にとってすら、本当に理想的なリーダーだった。卒業後の活躍にも期待したい。
【参考URL】
◆ 【竹内朱莉さん】ハロプロ流リーダー論「自分も楽しむ気持ちが大事。自信のなさを力に変えて!」 | MORE
◆ 【ハロプロ】譜久村聖さん&竹内朱莉さんが語る、これからの時代のリーダーとアイドルに必要だと思うこと | MORE
◆ 竹内朱莉(アンジュルム)インタビュー「目の前の試練をひとつずつ乗り越えていくのが夢への近道でした」│#タウンワークマガジン
◆ なぜ女子はハロプロにドハマリするのか? – 音楽ナタリー
◆ 竹内朱莉は卒業後、書道の道へ アンジュルムメンバーの自由すぎる卒業後の進路|日刊サイゾー