なぜ女性は女性議員に投票しないのか?女性が女性リーダーに期待しないワケ

なぜ女性は女性議員に投票しないのか?女性が女性リーダーに期待しないワケ

なぜ女性は女性議員に投票しないのか?女性が女性リーダーに期待しないワケ|リアンブルーコーチング舎

フリーライターの小林なつめです。

日本のジェンダーギャップ指数が、先進国の中で最低レベルだというのは周知の事実だ。今回はその中でも、順位を下げる一番の原因となっている「政治」の分野に焦点を当てたい。

日本には女性議員が足りない。2022年7月の参院選では女性当選者が過去最多となったが、それでも全体の15.4%に留まっている。

世界に目を向けると、196の国と地域のうち、118の国と地域では「クオータ制」が導入されており、女性議員が増えてきている。今や男女半数の内閣も珍しくない。


クオータ制とは…
議会における男女間格差を是正するために、女性、あるいは両性の比率を定めた制度。OECD加盟国30ヶ国のうち、クオータ制を導入していないのは4ヶ国で、日本はその1つ。

クオータ制に近い法律として、日本では2018年に「候補者男女均等法」が成立した。しかしこれは政党などにおける努力義務しか定めておらず、罰則もない。

そのため政党によって女性候補者数は異なり、特に議員数の多い与党では、依然女性候補者の割合が低くなっている。

次に選挙について考えてみたい。女性候補者の割合は、全体の30%ほど。そのうち当選するのはたった20%弱だ。女性候補者は男性候補者よりもずっと当選率が低い。

一方、投票者側に目を向けてみると、実は男性よりも、女性の投票者の方が多い。ここから導き出せるのが、女性の投票者の多くは女性候補者に投票していないという事実だ。

なぜ女性は女性議員に投票しないのだろうか?その理由を考察してみた。

・アンコンシャスバイアス
女性への差別は、男性だけが行っているわけではない。女性自身にも、同性である女性への偏見やミソジニー(女性嫌悪)に囚われている人が少なくない。

① 敵対的性差別
「女性は男性より能力が低い」、「女性は政治家に向かない」という敵対的な偏見が、他でもない女性自身に内面化しているケース。

② 慈悲的性差別
「女性は家庭に入った方が幸せ」、「議員になったところで苦労するだけ」など、一見好意的な女性への眼差しが差別となっているケース。

・共感性羞恥心
女性議員の割合が低い現状で、女性議員の言動はなにかと注目されがちで、男性議員と比べて「悪目立ち」しやすい傾向にある。

時にスキャンダラスな取り上げ方をされることもあるので、同性として共感性羞恥心が働く女性は多いかもしれない。「同じ女性として恥ずかしい思いをしたくない」と、女性候補者への投票を敬遠しているケースもあるようだ。

女性有権者の心理を考察して感じたのが、女性候補者への投票を避ける女性の多くは、自分が「性差別に囚われている」ことや、「同性にネガティブな感情を抱いている」ことに意識的ではないのではないかということだ。

女性候補者への女性の投票率を上げるには、まず女性有権者自身が、自身の持つ性差別などのネガティブな感情と向き合う必要があるのではないだろうか。


一方で明るい兆しも見られる。2022年夏の参院選では、若者を中心とした有志のグループによる「#女性に投票チャレンジ」というキャンペーンが実施された。比例代表で女性候補者に投票し、女性の当選率を上げようという試みだ。

「女性の力で政治を変えたい」という強い思いから、逆境に立ち向かう女性候補者たちがいてくれるのも心強い。この記事を書くにあたって視聴した、テレメンタリー2022「女性議員が増えない国で」では、1人の女性議員(伊藤孝恵さん )の街頭演説の言葉が胸に刺さった。

曰く「育児や家事や介護、全部ほかの人たちにやってきてもらった人たちがした政治が、今の日本を作っている」。この言葉通り、私たちは「育児も家事も介護も人任せに生きてきた男たちが牛耳る国」で生きているのだ。

この事実を感覚として理解し、言葉にできるのは、現状では女性であることがほとんどだろう。私たち女性の声を代弁してくれるのは、やはり女性議員なのだ。

この発言を聞き、私は改めて、人口の半分を占めるにもかかわらず、いまだ弱い立場の女性たちに寄り添えるのは、やはり女性なのではないかと感じた。

次の選挙に行く前には、女性議員が政治に携わる意義を、今一度考えてみてほしい。女性候補者の当選率を上げるムーブメントは、やはり私たち女性が巻き起こすべきだと思うのだ。

【参考】
「共同参画」2022年8月号 | 内閣府男女共同参画局
内閣府男女共同参画局|基本用語
クオータ制とは・意味 | 世界のソーシャルグッドなアイデアマガジン | IDEAS FOR GOOD
日本の国会議員の女性比率は15.4% – 立憲民主党
【参院選2022】女性当選者35人「過去最多」となった理由 | 大手小町
政治分野における男女共同参画 | 内閣府男女共同参画局
まだ少ない女性候補者 クオータ制導入は世界の潮流 | | 小宮山洋子 | 毎日新聞「政治プレミア」
「女、女というから落ちたんだ」衆院選落選・辻元清美が直面した女性議員への攻撃(浜田 敬子) | FRaU
目で見る投票率|総務省 選挙部
女性35人、過去最多 当選率は2割弱【22参院選】:時事ドットコム
なぜ増えない?女性議員 制度が壁、「クオータ制」導入を 三浦まり上智大教授に聞く【政界Web】:時事ドットコム
職場に潜むアンコンシャスバイアスの具体例を紹介。4つの弊害とその対処法とは|PHP人材開発
女性活躍を阻むアンコンシャス・バイアス2 偏見を乗り越えるには
比例代表で「#女性に投票チャレンジ」SNSで共感広がる 女性議員1人でも増やしたい:東京新聞 TOKYO Web

女性活躍カテゴリの最新記事