「マイクロアグレッション」が潜む日本社会…国民的アニメにも?

「マイクロアグレッション」が潜む日本社会…国民的アニメにも?

マイクロアグレッションが潜む日本社会…国民的アニメにも?

フリーライターの小林なつめです。

 

マイクロアグレッション(Microaggression)」とは、「マイクロ=小さな」と「アグレッション=攻撃」からなる造語。1970年代にアメリカの精神科医、ピアースが提唱した。簡単にいうと「日常的に繰り返される、マイノリティへの差別的言動」のことだ。

この差別行動の厄介さは、発言者に悪気がない点にある。つまり発言者にとっては何気ない言動に過ぎず、それが差別だという認識がない。その1つひとつは「些細な攻撃」かもしれないが、日常的に繰り返されることで、マイノリティの受ける傷は深くなっていく。

元は白人が黒人に行う「けなし」行動を指したが、日本で一番身近なのは、女性に対する行為ではないだろうか。性別によるマイクロアグレッションの具体例を以下に挙げる。

 

 

パターン1 :経済力・権力

ある夫婦が新築の家を建てようと、ハウスメーカーを訪ねた。夫婦揃って話をしているのに、営業マンが話しかけるのは夫ばかり。妻はその態度を失礼だと感じた。

→「女性には経済力がない」「決定権は夫にある」という決めつけによるもの。実際には夫婦は共働きで、今回かかる費用も折半する。

 

パターン2 :特定の能力

男性が女性ドライバーのタクシーに乗った。ドライバーはなめらかな運転でスムーズに行き先に到着。男性は満足し「女性なのに道に詳しいし、運転も上手で驚いたよ」と褒めたが、ドライバーは苦笑いだった。

→「女性は空間認識能力が低い」「運転が下手」という思い込みによるもの。これら特定の能力に、性別差があるという裏付けはない。

 

パターン3 性質・人格

国民的アニメに出てくる小学生女子は、お風呂に入るのが好き。主人公の男子はその風呂場に度々乱入し、女子が「◯◯さん嫌い!」と頬を染めて言うのがお決まりのシーンとなっている。

→「女性はおしとやかであるべき」「恥じらいがある方が魅力的」という、主に男性目線の固定観念によるもの。個人の性質や人格は、性別とは無関係。

 

これらの例から分かるように「普通、女性は◯◯」「××であるべき」のような考えや思い込みが、マイクロアグレッションに繋がる。
その固定観念は、マジョリティとしては当たり前のものなので、見逃されやすい。
「マイクロアグレッション」に加担せず、多様性のある社会づくりを目指すためには、以下のような対応をしてみるといいかもしれない。


個人としての対応

まずは自分が当事者でなくても、「マイクロアグレッション」の発現に気づくこと。
可能ならば、攻撃を受けたマイノリティをフォローし、発言者に「気づきのきっかけ」を与える一言がほしい。
たとえば「女性って◯◯で困るよな〜」の発言に「◯◯な男性も結構いますよ」と返すなど。


企業などの組織の対応

専門家の研修などによる教育や、啓蒙活動を積極的に取り入れる。
さまざまな具体例を知ったり、ロールプレイを行ったりすることで、自分にも無関係な話ではなく、被害者・加害者になりうるという当事者意識を持つ。
結果としてマイノリティに寄り添う姿勢を持つ人材が育つ。

 

【参考サイト】
日本の女性、「嫌なものは嫌」と言えないのはなぜ? 幼い頃から培われた女性観の罠|Buzz Feed
マイクロアグレッションとは何か?様々な立場の人が「日々」積み重なるように体験している【解説】 | HuffPost
身近な差別と偏見「マイクロアグレッション」 無自覚に他者を攻撃してしまう原因とは | ELEMINIST(エレミニスト)
マイクロアグレッションとは――意味と例、多様な人々が働く職場で企業が取り組むべきことは – 『日本の人事部』

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