【育児×キャリアシリーズ(番外編)】夫を「ケア要員」にしてしまった話

【育児×キャリアシリーズ(番外編)】夫を「ケア要員」にしてしまった話

【育児×キャリアシリーズ(番外編)】夫を「ケア要員」にしてしまった話

フリーライターの小林なつめです。

 

去に「シスターフッドを描いたフィクション作品についての所感」の記事でも述べたように、私は「性別などの属性と、役割分担は結びつけない方がいい」という考えを持っている。

…にもかかわらず、先日、最も身近な家族である夫に、無意識のうちに属性による役割の押しつけをしてしまっていたので、反省の意味を込めてここに記録したい。

 

との発端は、私の祖父の米寿のお祝いだった。私の両親は、数ヶ月前からお祝いの計画を立てていて、私はその相談を受けていた。

ある日、両親から「祖父を温泉に連れていくのはどうだろう。泊まりが無理なら立ち寄り温泉でも」という提案をされた。

併せて「もし実行するならば、夫くんの力を借りたいので、聞いてみてほしい」とも言われた。祖父は足に不自由があるので、夫にも協力してほしいということだった。

私はこの発言に、全く違和感を持たなかった。私と両親の頭にあったのは「祖父が喜んでくれたらいいな」という、それだけだった。しかし、いざ夫にこの提案について伝えたところ、夫からは手厳しい反応があった。

「それは本人が望んでいることなのか?」

「赤の他人である自分(夫)に介護されてまで、祖父は温泉に入りたいと思っているのか?」

「自分(夫)に介護の経験があるからと、あまり期待しすぎないでほしい」

 

は驚いた。夫が難なくOKしてくれると考えていたからだ。でも考えてみれば、夫の言っていることは至極真っ当だ。祖父が望んでいるかどうか分からないことを、夫の力を借りてまで実行しようとするなんて、祖父にも夫にも失礼なことではないか。

特に夫に関しては、「私は気づかないうちに、夫をケア要員にしてしまっていたのかも…」というところまで思い至り、私はとても反省した。

 

と私の両親が、夫にここまで大きすぎる期待を寄せてしまったのには理由がある。

まず、夫は、実の孫でもないのに、祖父のことを日頃から気にかけてくれていて、よく一緒に様子を見に出かけてくれる。会えば体を気遣い、話し、時にお酒の相手にもなってくれる。

さらに彼は、福祉業界で働いた経験のある、素人から見れば、「介護のプロ」でもある。

これらの理由が積み重なって、私たち家族は知らず知らずのうちに、夫を「ケア要員」と見なしてしまっていたのだった。

 

ア要員というのは、元々、家事や育児、介護といった、誰かのケアを担わされる人のこと。これまでも、今も、男性ではなく女性側が担わされている役割だ。

私が今回してしまったように、そもそも「ケア要員」は、性別に関係なく、誰か1人が担うべきものではない。誰かがそれをできたり、得意だったりしたとしても、その人が望んでいないのならば、その1人に負担や責任を押し付けるべきではない。

それに気づかずに、悪気なく押し付けてしまっているケースもあるだろう。そう考えると、押し付けられた側は、我慢して受け入れるのではなく、今回の夫のように断る勇気を持つことも大切なのだと感じた。

 

族だからといって、何もかも受け入れる必要はない。むしろ、長く、深い関係性を築く家族だからこそ、できないこと、したくないことは「やらない、やりたくない」と伝え、なぜそう考えたのかを、本心で話し合うことこそが、重要なのではないだろうか。

 

【参考URL】
「女性の気遣いにはかなわない」?――ケア役割と性差|後藤博和(関西大学文学部非常勤講師)|大学キャンパスtoナース・ステーション
ケアとジェンダー |東京都北区スペースゆう情報|

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