シスターフッドを描いたフィクション作品についての所感【属性と役割分担は結び付けない方がいい】

シスターフッドを描いたフィクション作品についての所感【属性と役割分担は結び付けない方がいい】

シスターフッドを描いたフィクション作品についての所感【属性と役割分担は結び付けない方がいい】

フリーライターの小林なつめです。

ここ数年、フェミニズムやシスターフッドなど、女性の生き方や在り方をテーマにした、フィクション作品が増えている。

最近注目を集めたのが、昨年(2022年)11月からNHKの夜ドラで放送された「作りたい女と食べたい女」と、現在テレ東のドラマ24で放送中(2023年1月を〜)の「今夜すきやきだよ」だ。

どちらも原作はウェブ上で公開されている漫画で、女性を中心に注目を集めている。

2つの作品に共通するテーマは「女性の生きづらさを、女性同士で分かち合う」ことだ。これこそシスターフッド。今の日本は、女性たちが自分たちの性(生)や、女性同士のつながり方を見つめ直す時季にあるのかもしれない。

私はこの2つの作品の純粋なファンなのだが、先日「今夜すきやきだよ」のドラマを見ていて、ふと気づいたことがある。

それが、「役割分担を属性と結び付けない方がいいんだな」ということだ。

その理由をまとめるために、作品の設定について、軽く紹介する。

両作品とも、ある2人の女性の関係性を中心に、ストーリーが展開する。2人のうち1人の女性は料理や家事をするのが好きで、2人でいる時には、食事作りを担うことが多い。

必然、もう1人の女性は、その恩恵を受け、おいしい食事を振る舞われることになる。でも、彼女たちは、片方が料理を担ってくれることを、決して「当たり前のこと」にはしない。

第一に、彼女たちは感謝の気持ちを忘れない。言葉を惜しまずに、あるいは態度で、感謝や賛辞、尊敬の気持ちを伝える。時には一緒に料理をしたり、後片付けを引き取ったり、自分の得意なことでお返しをしたり。もちろん食材費の負担も忘れない。

これらの言動には「相手に負担を押し付けたくない」という、思いやりや気遣いの気持ちが表れている。

私は彼女たちの関係性を見て、「役割分担自体は、そんなに悪いことではないんだな」と思った。ただ、それが性別に結びつくと良くない

それは「男は〇〇する」「女は〇〇する」という決めつけ、すなわちジェンダー・バイアス、無意識の差別や偏見となってしまうからだ。

どちらの作品でも、料理好きな女性はジェンダー・バイアスに苦しめられている。それは「料理好きな女性って素敵」「いい奥さん(お母さん)になりそう」といった、周囲の人々に何の気なしにかけられる言葉だ。

彼女たちは自分の趣味である料理を、他者に「女性性」と紐づけられ、勝手に評価されたり、意味づけされたりすることを苦痛に感じ、辟易している。

これはジェンダーに限らないことだ。私たちは誰かの属性…年齢や職業、特性、人種や住んでいる場所などから、その人の性格や価値観、ものの考え方や得意なことを、イメージとして結び付けてしまいがちだ。

例えば「シニアだから穏やか」とか、「大阪人だから話が面白い」、「黒人だから運動神経がいい」などなど…これらのステレオタイプを含んだメッセージは社会にあふれ、私たちの頭の中に刷り込まれ、「アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)」となっている。

属性から、性格や得意なことを決めつけられ、押し付けられるのは苦しい。

属性と一致していない場合もだが、一致していたとしても、それを「女性だから」のように言われるのには違和感がある。相手がそれを「褒め言葉」として発していても、モヤモヤは変わらない。

「おしゃべり」
「ちょっと神経質」
「時々驚くほど大胆」
「絵を描くのが好き」
「走るのが速い」
「家事は好きだけど、得意じゃない」
「気が利かない」
「バリバリ稼ぎたい!」

あなたを構成する1つひとつの要素は、それがあなたであることの証明だ。属性とは関係ない。

自分はもちろん、誰かと向き合う時にも、属性によって縛られた価値観をほどいて、ありのままの姿を受け入れられたら、きっと誰もが幸せだ。

これこそが、ダイバーシティ(多様性)とインクルージョン(受容、包括)の軸となる考え方ではないだろうか。

【参考書籍】
『作りたい女と食べたい女1~3』ゆざきさかおみ/著 KADOKAWA 2021.6~2022.11

シスターフッドを描いたフィクション作品についての所感【属性と役割分担は結び付けない方がいい】シスターフッドを描いたフィクション作品についての所感【属性と役割分担は結び付けない方がいい】

『今夜すきやきだよ』谷口菜津子/著 2021.9

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【参考サイト】

ドラマ『つくたべ』が描き出すジェンダーロール(性役割)のさりげなさ:telling,(テリング)
『作りたい女と食べたい女』が解く呪い。「女と料理」、レズビアン・アイデンティティー | CINRA
『作りたい女と食べたい女』が切り取る日常の違和感 様々な“当たり前”からの解放(リアルサウンド) – Yahoo!ニュース
ドラマ『作りたい女と食べたい女』制作に込めた想い – TOKION
『今夜すきやきだよ』家族でも、恋人でもない、女ふたり暮らしの物語が暖かい|Real Sound|リアルサウンド ブック
谷口菜津子「今夜すきやきだよ」 家族の固定観念、軽やかにほぐす|好書好日
フィクション世界の“女”って、型が決まりすぎじゃない? 現実社会とのつながりを正面から描いたシスターフッド×GL漫画、『つくたべ』愛読者座談会 | ダ・ヴィンチWeb
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