
フリーライターの小林なつめです。
共働き家庭が増えた昨今。妻が、夫の家事や育児のやり方や関わり方、レベルの低さに不満を抱き、ダメ出しするのは、よくある話です。
インターネットで「妻 家事 ダメ出し」というキーワードで調べてみると、たくさんの体験談が出てきますし、当事者の方も大勢いるでしょう。
私はこの話について、妻と夫、どちらの気持ちにも共感できます。
なぜなら、我が家は私と夫とで家事・育児をほぼ半々で「シェアしている」からです。
私は夫に文句を言う側でもあり、ときには言われる側にもなります。
以前「「家事は完璧に」という呪縛を捨てよう!」という記事では、夫の洗濯物の干し方に不満があると書きましたが、私も同じように、日々多くのクレームを夫から受けています。
夫の方が、きれい好きで完璧主義なので、私が文句を言われる機会の方が多いくらいです。
でも、一般家庭では、主に家事・育児を担っている妻が、夫の家事・育児に不満を持つケースが、ほとんどでしょう。
先日読んだ『ジェンダーで読み解く男性の働き方・暮らし方』という本に「マターナル・ゲートキーピング」という言葉が出てきました。
「マターナル・ゲートキーピング」とは、妻が無意識のうちに、夫の家事・育児への参加について主導権を持ち、コントロールしようとしてしまう現象のことです。
「家事や育児は自分の役目」という意識の強い母親が、門番(ゲートキーパー)となり、「自分流の家事・育児」でなければ、夫のやり方にダメ出しをして、夫を城(家庭)から締め出してしまうのです。
先日、育休についてのインタビュー中に、「家事・育児をやりすぎて、妻に叱られた育休中の夫」なる人がいたという話を聞きました。
これはまさに「マターナル・ゲートキーピング」の心情によるものでしょう。
「家事・育児を夫にもやってほしい」「自分ばかり負担するのは嫌だ」と思うのと同時に、心の奥底では自分こそが指揮官で、夫に自分の決めた範疇以上のことはしてほしくないと思ってしまっているのです。
これは、子育て中の夫婦にとって、あまり良くないことです。
口では「夫にも家事・育児をしてほしい」と言うのに、実際に夫が取り組むと、過剰にダメ出しをしたり、「ここまででいい」と線引きしたり…言動に矛盾が生じてしまっています。
このような妻の行為は、夫の家事・育児への参加意欲を削いでしまいます。
だんだんと夫は家事や育児から遠ざかり、そうなれば妻は、家事・育児とその責任を、自分ひとりで背負わなくてはならなくなるでしょう。
一方の夫は、家庭から締め出されて、家での居場所を見いだせなくなるリスクがあり、妻と夫、どちらにとっても良くない結果となってしまいそうです。
前述した『ジェンダーで読み解く男性の働き方・暮らし方』には、「男性が家事や育児のやり方で妻とぶつかって悩むのは、主体的に関わろうとしているからこそ」「2人が衝突するのは、新しく平等で民主的な夫婦関係を2人で築いていこうとしている証」とありました。
本当にその通りで、ぶつかること自体は、悪いことではなく、夫婦で何も言えなくなることの方が問題なのだと思います。
もし、「マターナル・ゲートキーピング」に陥ってしまったら。
夫は「妻に寄り添おう」、妻は「夫を受け入れよう」と、お互いに歩み寄る姿勢で対話を重ねるほかないのではないでしょうか。
参考:フリーランス兼業主夫日記「「マターナル・ゲートキーピング」とは。いわゆる「家事ハラ」のことかな。」
『ジェンダーで読み解く男性の働き方・暮らし方』多賀 太/著 時事通信出版局 2022.3『ジェンダーで読み解く男性の働き方・暮らし方』多賀 太/著 時事通信出版局 2022.3