フリーライターの小林なつめです。
これまで「目指すは「ワンオペ育児」の撲滅!ゼロコミット男子、イクジナシ夫の実態とは?」の記事などで、家事をしない夫について、幾度か取り上げてきました。
そこですでに述べている通り、国内外問わず、小さな子どものいる家庭でも、夫と妻の家事時間には圧倒的な差があることが明らかにされています。
これでは妻に不満がたまるのにも無理はありません。
妻に経済力があってなお、夫が上のグラフ程度にしか家事をしないのであれば「夫はもういらない」と思われても、致し方ないと思ってしまいます。
でも、一方で、妻自身が「夫に家事をさせない、させたくない」という家庭もあると聞きます。「服の畳み方が自分と違う」、「掃除機のかけ方が雑」など…家事について、夫に自分と同等の高度な家事レベルを要求しているパターンです。
その場合、夫の家事時間が少ない責任の一端は、妻にあるといえるのではないでしょうか。
もし、夫の家事時間を増やしたいなら、多少は妻側が譲歩して、夫への家事の要求ハードルを上げ過ぎるべきではないと、私は考えています。
もちろん、夫を「褒め育て」までする必要はありません。ただ、家事レベルに対する「ある程度のあきらめ」は、必要ではないかと思うのです。
以前書いた記事「どうすれば家事の分担がうまくいく?「家事は面倒なもの」だというバーゲニング理論」でも述べた通り、日本には「家事を美徳」とする感覚や「家事は女性がするもの」という、旧態依然な価値観が強く残っており、多くの女性が、今もその呪縛にとらわれています。
まずはその呪縛を捨てるところから始めなければ、夫の家事時間を増やせないのではないでしょうか。「家事はきちんと、完璧にしなければ」という呪縛は、自身の家事のハードルを上げ、さらには夫への要求をも上げてしまうからです。
「家事シェア」を提案しているNPO法人の代表者も、家事の分業を進めるには、「ゆだねたところは完全にゆだねるべき」「夫のやり方に文句を言わない」ことが重要だと主張しています。
例えば私も、家事育児は夫とほぼ半分ずつ分担してはいますが、夫に文句を言いたいポイントは多々あります。(夫にもあると思います。)
例えば洗濯物。私は干す前の洗濯物は、シワを伸ばしてから干します。
でも、夫はシワを伸ばすことはせず、洗ったままの形で、そのまま物干しやハンガーに干します。新婚時代から、「乾いた後シワが残るから」と、夫に洗濯物のシワを伸ばすよう懇願してきましたが、いまだに応じてくれません。
「それならもうやらなくていい」
子どもが1人のうちは、そう言えましたが、2人になると、そうも言っていられなくなりました。私の場合、夫にも洗濯をしてもらわなければ、仕事と家事の両立が困難だったのです。
今ではもう「多少シワがついていてもいいや」「死ぬわけじゃないし」という気持ちで、目をつぶれるようになりました。
自分の時間や体力を削ってまで、家事を多く負担したり、より「完璧」に近い家事を実現するよりも、シワのついたままの服を着る方が、マシだと考えたからです。
自分のこだわりを捨て、気持ちを切り替えるのは、本当に難しいことです。「こだわり」ではなく「当然の範疇だ」と考えている人も少なくないでしょう。
夫の家事のやり方に慣れるまではストレスもたまります。でも、一度慣れれば大丈夫。意外と気にならなくなるものです。
まずは「家事は完璧にしなければ」という思い込みから、脱却するべきでしょう。そうすれば、夫との家事の分担がしやすくなるはずです。
【参考】
『「家事のしすぎ」が日本を滅ぼす ( 光文社新書 917 )』佐光 紀子著 光文社 2017.11
■我が国における家事関連時間の男女の差~生活時間からみたジェンダーギャップ~