フリーライターの小林なつめです。
4歳の息子のメガネ選び
私の息子はメガネをかけている。メガネをかけ始めたのは、3歳になったばかりの頃だった。その頃は身につけるものに対して、まだあまり自己主張がなかったので、私が初めてのメガネを選んだ。どんな色や柄の服にも合う透明グレーに、無難なスクエア型のメガネだった。
それから1年が経ち、彼は4歳になった。3歳でぐんと成長し、色々なものへの興味関心が出て、好みも自己主張もはっきりしてきた。そんな時、メガネを新調することになった。いざ家族で息子行きつけのメガネ屋さんへ。店内にはたくさんの子ども用のメガネが並んでいる。「たくさんあるね♪息子はどれがいい?」と尋ねた時、息子が最初に気に入ったのが、ピンクのメガネだった。
「女の子用」としてのピンク色と私
ピンク…!!
正直に言うと、私はピンクが苦手だ。幼少期は好きだったらしいが、小学校に上がる頃にはすっかり苦手になっていた。ピンクだけじゃない。スカートやフリル、レースなど、「女の子」を連想させるもの全般が苦手だった。いかにも「女の子」な服やアイテムを身につけるのに、照れや恥ずかしさがあったのと、「あなたは女の子だ」という世間の圧への抵抗感とが同居していたように思う。
そして今もその嗜好は変わらない。私は青や緑、黒やグレーなどの色が好きで、子どもたちにも普段から、そういう色の服やアイテムを買うことが多い。それなのに息子がピンクを選んだことに、私は驚いた。
「女の子向け」を選んだ息子への正しいリアクションは?
ただの「ピンク色のメガネ」ならまだよかったかもしれない。しかしそのメガネには、つるの部分に大胆なハート柄があしらってあった。完全に「女の子向け」のメガネだ。私は何と言えばいいのかわからず、一瞬言葉が出なかった。
「いいね!」と言えば、これを買うことになるかもしれないし、だからといって「ピンクはやめて」とはとても言えない。そう言えば「なぜ?」と聞かれるだろう。「それは『女の子用』だから」と答えるのか?私は「ブルーは男の子の色、ピンクは女の子の色」なんて思わないようにしているし、息子にバイアスを刷り込みたくないと、日々強く願っている。さらに仮にも私はライターとして、ジェンダーのコラムを書いている身。そんなこと、口が裂けても言えないではないか。
結局私は息子に「…きれいな色だね」と返した。いいとも悪いとも言わず、ジャッジしないようにした。結局その後息子は、そのピンクのメガネの隣に、大好きな車の柄が入ったメガネを見つけ、それを買うと言った。私は密かに安堵した。そしてそんな自分にがっかりしてしまった。日頃あれだけジェンダーだ何だと言っているにも関わらず、親としてはこの体たらく。
ピンクのメガネに動揺した2つの理由
なぜこんなにピンクのメガネに動揺したのか。考えてみると、理由は2つあった。
1つはそれがメガネだったこと。メガネは毎日かける。起きている間ずっとだ。補助金が出るとはいえ高価なものだし、年に一度買い替えるため、基本的にはスペアなしの1本しか持っていない。「やっぱり嫌だ!」と思っても、簡単には買い足せない。
そして2つ目は周りの視線だ。彼がもしピンクのメガネを「やっぱり嫌だ」と思うとしたら、保育園で友だちに何か言われた場合だろう。そもそもメガネをかけている4歳児はあまりいない。息子の保育園では、30人のクラスに1人いるかいないかだ。それなのに、ピンクのハート付きメガネをかけていたら、悪目立ちしてしまう。からかいのタネになってしまうかもしれないアイテムを、わざわざ選んで身につけなくてもいいではないか。
ジェンダーバイアスと息子、その将来
私はピンクのメガネをかけないことが「息子を守ること」だと考えた。でも「子どもを守る」って何だろう。世間体を気にして、子どもの好みや意思を無視することなんだろうか。結論は出ておらず、私は今なお考え続けている。
再来年、小学校に上がる予定の息子は、来年には「ラン活(ランドセル選びにまつわる活動)」だ。先日お店でランドセルのチラシをもらった息子は「ぼくは黒がいいんだ、強い色だから」と言っていた。私は意外に思いながらも、彼に根付きつつあるジェンダーバイアスに思いを馳せた。年齢が上がるにつれ、ますますこういった場面は増えるのだろう。そこで私は彼に何を言うのか、伝えられるのか。私の気持ちと意見を整理しておかなくてはと考えている。
【参考URL】
■「男の子がピンク好きでもいいんだよ」娘に教えるために父がとった行動が素敵すぎる…ツイッターで反響 | マイナビニュース
■息子が赤やピンクのランドセルを欲しがった。親はどうする? | DRESS [ドレス]