フリーライターの小林なつめです。
私が公務員を辞めてフリーランスになった一番の理由が、第二子を望んだからだ。そういう経緯もあり、フリーランスの働き方については、前もってそれなりに調べていた。だからもちろん建前として「フリーランスには育休がない」ことは知っていた。でも、ただ知っているのと、実際に体験するのとでは、天と地ほどの差がある。
フリーランスは「事業主」だ。会社員や公務員のように、雇用保険に加入できる「労働者」ではない。そのため、労働者であれば当然受けられる保障が受けられない。有休もないし、育休も介護休暇もない。傷病手当や出産手当などの給付金ももらえない。
育休に関していうと、休みは取ろうと思えば取れる。自分で期間を決めて、仕事をせずに休めばいいだけの話だ。でも労働者と違って有休ではないため、休んだ分だけ、収入が減る。まぁここまでは諦めもつく。でもフリーランスには、産後、「認可保育園への入園」という、最大のハードルが待ち構えている。
自治体にもよるが、ほとんどの場合「労働者」として育休をとり、その後復職予定であれば、認可保育園に「加点付き」で入園申請ができる。しかし育休のないフリーランスには加点がない。保育園の入園はポイント制なので、加点の有無はかなり大きい。
育休加点のないフリーランスは、加点のある「労働者」に太刀打ちできないため、早いうちに保育園の入園を考える必要がある。「産後1年くらいは一緒に過ごしたいな…」なんて悠長なことは言っていられないのだ。
また、子どもが2人目以降で、上の子が保育園に通っている場合、ハードルはさらに高くなる。基本的に産後約2ヶ月は猶予があるが、それ以降も仕事を休む場合、上の子の退園を求められる可能性があるのだ。下の子の「育休中」なら預かりが可能な自治体もあるが、育休のないフリーランスには、この措置が取られない。
たとえ乳児を在宅で見ながら働いていたとしても、「下の子を在宅で見られるなら上の子も見られるはず」というロジックで、上の子退園のリスクは減らない。
幸いなことに、私の住んでいる自治体では、フリーランスでも「働いているならば」上の子のみの通園がOKだった。そこで私は産後1ヶ月で仕事復帰し、下の子を在宅育児しながら働いた。赤ちゃんに授乳や寝かしつけをしながら、日々執筆に勤しんだ。
ところで、数年ぶりの赤ちゃんはとてもかわいかった。私はできる限り長く、赤ちゃんのそばでお世話をして過ごしたいと思った。しかし、フリーランスとして働き続けるなら、入園を先延ばしにするのは危険だ。もし仕事が忙しくなった時に慌てて保活をしても、預け先がなければ、仕事を断念しなければならないかもしれない。
まさに赤ちゃんとキャリアの板挟み。保育園に入園枠があるうちに、どちらかを選択しなければならない。子どもといられる時間は短く、赤ちゃんの時期は本当に貴重だ。それを知っているからこそ、とても悩んだ。
でも結局、私は次子の生後半年で入園の申請を決めた。寂しい、つらいという感情は消えないけれど、背に腹は代えられない。私は働くことが好きなので、キャリアを中断しない道を選んだのだ。この選択が正しかったのか、今でもわからない。でもその時は私たち家族にとって、これがベターな選択だったのだ。
労働者も事業主も同じように働いているのに、なぜこんなにも待遇が異なるのだろう。事業主であっても、労働者と同じように「育休」をとる権利を認めてほしい。もちろん有休である必要はない。ただ、育児のために休みをとったことが、保育園入園に際して不利になるような現状の扱いは、あまりにも不平等ではないだろうか。
これから、女性の働き方はますます多様化が加速するはずだ。女性が妊娠や出産を望む場合、育児と仕事を両立しなければならない場面が必ず訪れる。そんな時、自分の選んだ働き方によって、育児と仕事を天秤にかけて苦しむようなことはあってはならないと思う。女性の労働力を期待するならば、どんな働き方をしていても、育児との両立ができるような支援が必要だ。一刻も早く制度の見直しをしてほしいと、心から感じた一件だった。
【参考URL】
フリーランスは事業主 有休や出産手当金、ナシに注意|NIKKEI STYLE
フリーランス(自営業)の実情 産休育休もとれない理不尽な保育園探し! | 株式会社Waris