フリーライターの小林なつめです。
まずは、前半の記事の内容を簡単に振り返ってみましょう。
前半の記事「『自己責任』と責める前に知ってほしい!日本のジェンダー現代史 前編」では、戦後の復興期から1973年頃までの「奇跡的な高度経済成長」は、性別役割分担によって、成し遂げられたこと。
また、「女性の貧困元年」と呼ばれる1985年前後に起きた、以下のような出来事について紹介しました。
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日本は、国際社会のジェンダー平等の流れに負けじと、男女雇用均等法を成立させました。
しかし、それと同時に、女性が配偶者の扶養に入りやすい仕組みを作り、男性と同じように働くのではなく、専業主婦やパート主婦としての生き方を推奨したのです。
ここで注目したいのが、同時期の1986年に成立した「労働者派遣法」です。
この法律は元々、専門的な業務のみに限定したうえで、派遣業を許可し、労働者を守るために設けられたものでした。
しかしこの後、労働者派遣法は本来の目的を逸脱した規制緩和を繰り返します。
規制緩和に喜んだのは、コスト削減を狙う企業や行政です。あらゆる職場が、雇用する正社員を減らし、非正規社員を増やした結果、非正規雇用の割合は今も増加を続けています。
現状、2023(令和5)年時点で、労働者全体の約4割(37%)が非正規雇用ですが、その半数以上は女性で、その割合は男性の2倍以上(女性53.2%に対し、男性22.5%)です。
(参考:男女共同参画局 令和5年の働く女性の状況)

※男女共同参画局 「令和5年の働く女性の状況」のデータを元に作成
グラフで見ると、男女の正規・非正規の割合の大きな差がハッキリと分かります。現状、低賃金労働で不安定な非正規雇用の大半を、女性が担っている状況だといえます。
また、男女共同参画局の調査では、2024(令和6)年時点で、専業主婦の数は相当数減ったものの、パートで働く女性の数はフルタイムで働く女性を上回っています。

出典:男女共同参画局「令和7年版男女共同参画白書の概要」
この状況は、国の目指していた、理想の「男女の働き方」かもしれません。
でも、この状況で、当事者である女性たちは、幸せになれたのでしょうか。
パートや非正規雇用では、低賃金なうえに、無期雇用で、いつまで働けるかも分かりません。つまり、女性たちはこのような働き方をしている限り、経済的に自立できないのです。
『家事は大変って気づきましたか?』の著者、阿古氏は「日本の社会がなかなか変わらないのは、性別役割分担を「理想」とする思いから、男女が自由になれないから」といいます。
結局は、「男性を長時間働かせる今の社会構造を変えたくない」という本音が、日本社会にくすぶり続けているのではないでしょうか。
となると必然的に、家庭の責任や負担は妻にのしかかってきてしまいます。
この時点で、夫婦対等はあり得ません。妻に「自分は養ってもらっている立場なのだ」という弱みがある限り、家事・育児のシェアを夫に求めることは、そう簡単ではないからです。
阿古氏は「現状では、女性が男性と対等に働くには、結婚しないか子どもを産まない人生を選ぶしかない…夫がいなければ、「家事をしない」と不満を言わなくて済む。子どもがいなければ、家事は大幅に減る。」と、現実を冷静に分析します。
さらには「家庭で家事シェアがなかなか進まないのは、努力が足りないからではなく、夫婦が性差別社会に取り込まれているからだ。」とも述べています。
私たちは、自分の頭で考え、選択し、行動しているつもりで生活しています。
でも…実際には、国の政策や社会の価値観に知らず知らずのうちにあらゆる制限を受け、縛られ、その小さな枠の中で、もがいているだけなのかもしれません。
私たち1人ひとりが社会の一部である以上、女性の自立や労働にまつわる全ての事象が、完全なる「自己責任」とは、なりえないのです。もちろん男性も、例外ではありません。
【参考】
■『ジェンダーで読み解く男性の働き方・暮らし方 ワーク・ライフ・バランスと持続可能な社会の発展のために』多賀 太/著 時事通信出版局 2022.3
■『家事は大変って気づきましたか?』阿古 真理/著 亜紀書房 2022.10