「自己責任」と責める前に知ってほしい!日本のジェンダー現代史 前編

「自己責任」と責める前に知ってほしい!日本のジェンダー現代史 前編

「自己責任」と責める前に知ってほしい!日本のジェンダー現代史 前編フリーライターの小林なつめです。

 

こんな女性の声を目に、耳にしたことはありませんか?

働きたいけど、家事と育児で余裕がない

フル勤務だけど、夫がハードワークで毎日ワンオペ

非常勤(パート)として働いているけれど、毎月ギリギリの生活

 

例えばSNSでこういった類のポストが話題になったとき、たくさんの、さまざまな立場の人からの反応が寄せられています。

そして大抵その内容は、「妻が悪いか/夫が悪いか」「能力や努力が足りないのでは」「向上心がない」「彼らはどうすべきなのか」など、自己責任論に終始することが多いようです。

でも…本当に、これらの問題は、彼ら自身に責任があるのでしょうか。

家事・育児と仕事を両立させられない妻が悪いのか?

長時間労働で、家庭にまで手が回らない夫が悪いのか?

パートや非常勤として働く女性は、能力・努力や向上心に欠けるのか?

 

これらの疑問について、日本のジェンダーに関する現代史を紐解くと、そう簡単に「自己責任」とは言えなくなる、現代に至るまでの経緯や背景を学ぶことができます。

今回私が参考にしたのは、以下の2冊です。

多賀太『ジェンダーで読み解く男性の働き方・暮らし方』

阿古真理『家事は大変って気づきましたか?』

 

日本という国が、ジェンダー・ギャップ(男女の性差による格差)という点で、欧米諸国に大きく遅れをとっているのはなぜか、考えていきましょう。

日本におけるジェンダーを考える上で重要なのが、夫婦同姓制度の続く「家父長制」の概念と、「男は仕事、女は家庭」という、性別役割分業の考え方が根強く残っている点です。

なぜ日本は、家父長制や性別役割分業の概念に囚われているのか。それは、過去の成功体験ゆえだと、『家事は大変って気づきましたか?』著者の阿古真理は述べています。

戦後の復興期から1973年頃までの「日本の奇跡的な高度経済成長」は、性別役割分担によって、成し遂げられました。

「この大きすぎる成功体験が、長らく女性を積極的に雇用しない社会を変えずにきた。」

また、日本のターニングポイントとなったのが、「女性の貧困元年」と呼ばれる1985年です。この年に何が起きたのでしょうか。

 

ここからは、多賀太氏の『ジェンダーで読み解く男性の働き方・暮らし方』を参考にします。

1980年頃、欧米を中心とする国際社会ではジェンダー平等の大きなうねりが起きていました。1979年には国連が「女子差別撤廃条約」を採択。日本も国際社会に置いていかれないため、負けじと条約に批准したのです。

この結果、日本では1985年に男女雇用均等法が成立しました。

 

ここまではいいのです。しかし、これ以降の動きが問題です。

というのも、ジェンダー平等を目指すと宣言したのと同時期に、日本政府はそれと矛盾する政策を次々と導入していったのです。

例えば同年の1985年には「第三号被保険者制度」。1987年には「所得税における配偶者特別控除」が導入されました。

この2つの制度について、専業主婦、あるいは、妻がパート勤務をしている共働きの方は、よくご存じでしょう。そう、「106万の壁」や「123万の壁」の元凶となっている制度です。

この制度は「収入が一定水準を超えると、年金や税制上のデメリットが生じる」仕組みです。

簡単に言えば、「男性と変わらないくらいの稼ぎがなければ、働かない方がマシ」となるような制度です。半端に働くと、いわゆる「働き損」になってしまうのです。

この制度があること自体、日本で「配偶者に扶養される側」となりやすい女性に対する「経済的に自立するより、夫に扶養された方がいいよ、優遇するから」という、国からのメッセージとなります。

 

つまり日本は事実上「専業主婦やパート主婦を優遇」し、「女性をあくまで家庭にとどめ置こうと」しており、建前では「男女平等社会を目指す」と言いながら、本当は、それと真逆の方向性の「性別役割分業」を続けたいのではないかと推測できます。

 

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「自己責任」と責める前に知ってほしい!日本のジェンダー現代史 後編

 

【参考】
■『ジェンダーで読み解く男性の働き方・暮らし方 ワーク・ライフ・バランスと持続可能な社会の発展のために』多賀 太/著 時事通信出版局 2022.3
■『家事は大変って気づきましたか?』阿古 真理/著 亜紀書房 2022.10

 

 

 

 

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