
フリーライターの小林なつめです。
育休を「人生の夏休み」と呼ぶ人たち
「人生の夏休み」というフレーズを聞いたことはありますか?
一般的には、自分の時間を好きなように使うことのできる大学時代を「人生の夏休み」と呼ぶことが多いようです。
一方で、産育休の期間を「人生の夏休み」と表現するパターンもあります。私自身、覚えている限りで2回、同じようなフレーズを聞いたことがあります。
一度は女性の友人と出産や子育て、キャリアについて話していたとき。彼女は2人目の子どもの産育休について、第一子よりも余裕があるから「人生の夏休み」だと話していました。
二度目は先日の「 」で、当事者Mさんが育休を「ご褒美」と言っていたとき。同じニュアンスの「人生の夏休み」というフレーズが頭をよぎりました。
もちろん、産育休を「人生の夏休み」と思えるかどうかは人によります。
たとえば私自身は、産休中は飲まず食わずの長期入院、産んだら産んだで新生児~乳幼児の育児にノイローゼ気味になり、とても夏休みと呼べる状況・心境ではありませんでした。
実際の育休は「夏休み」と呼べるようなものではない
産休はともかく、育休を気楽で自由な「夏休み」と表現するのは、私が思うにやや盛り過ぎで、育児界隈ならではの「キラキラコーティング」がかかっているような気がします。
実際には、0歳児育児は不眠不休で24時間365日体制のハードワーク。生きるか死ぬかの0歳児を常に見ておかなければならず、自分の時間はあってないようなものです。
ワンオペや母乳育児であれば特に、時間にも行動範囲にも厳しい制限があるので、外出はおろか、家事すらままならない日々が続く可能性もあります。
一人目の子どもだと、育児の勝手も分からず、プレッシャーも強い中、まだ泣くことしかできない子どもと、ひたすら向き合わなければならず、精神的にもしんどい日々が続きます。
産育休を「人生の夏休み」と呼べる人は、ほんの一握り
また、表立って「産育休=人生の夏休み」と発信すれば、確実に世間の反感を買います。
2023年に国会の代表質問で、議員が「産育休の期間にリスキリングを」と発言、首相が「後押ししたい」と答弁した一連のやり取りが炎上したのも、結局は「産育休は休みじゃない!」という、育児中の親たちの叫びそのものでした。
つまり、多くの親が「産育休は「休み」と呼べるほど自由で気楽なものではなく、リスキリングなんてもってのほか!」という状況なのです。
産育休を夏休みのように感じられるのは、以下のような人だけなのではないでしょうか。
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・産中~産後、心身ともに健康 ・仕事よりも家事育児の方が苦にならない ・子どもとの相性が良かった(育てにくさを感じなかった) ・ワンオペ時間がない(短い)か、ワンオペでも平気 ・育児の協力体制がしっかりしている |
充実した「人生の夏休み」で家庭に貢献!
前回の「【男性育休】当事者インタビュー」では、当事者Mさんが、育休を取った理由の1つとして「仕事を休みたいタイミングだった」と話していました。
私はそれを聞いたとき、内心ドキッとしました。「仕事を休みたい⇒育休」という構図は、いかにも世間に叩かれそうな、ちょっと危うい考えだなと思ったからです。
しかもMさんの場合、現在は専業主婦の妻Tさんがいるうえでの育休。世間的に見れば「恵まれている」部類に入ります。まさに「人生の夏休み」タイプの育休かもしれません。
とはいえ、育休に入れば、仕事から離れられるのは、ほかならぬ事実です。それに、Mさんは育休の毎日を、妻子にとても誠実に、真摯に向き合って過ごしていました。
結局、重要なのは動機ではなく、「育休中にどう過ごすか」ではないでしょうか。
妻のTさんに「(家事・育児を夫に)やり過ぎてもらっているかも」と言わしめるHさんは、育休の意味や意義が十分に理解できており、それを行動に移せていました。
育休取得の動機や捉え方は、あくまでも個人や各家庭の自由。何よりも「育休を取って、家事・育児に取り組み、家庭にどれだけ貢献するか」が大切です。
男性育休に多いという「とるだけ育休」は、まず論外でしょう。
※とるだけ育休…男性が育休を取ったものの、家事・育児に限定的な参加しかしない実態。「名ばかり育休」とも。「男性育休白書2024」によると「女性の4割が夫の育休を「とるだけ育休」と評価」している。
【参考】
■しろまるけい子「育児休暇はオトナの人生の夏休み」
■天狼院書店「男の育休は、人生の夏休みかもしれない」
■朝日新聞「炎上した「育休中にリスキリングを」提案 育児に欠けた視点とは」
■選挙ドットコム「岸田総理の「産休・育休中の学び直し」が大炎上。その価値観のズレと本当の問題点とは」
■積水ハウス「「男性育休白書 2024」 発表!」
■ 2025年8月11日掲載記事【男性育休】当事者インタビュー①:~夫、育休取得編~