男性の「子育てする権利」を取り戻せ!競争意識の強い男性が目指す「新しい男らしさ」とは?

男性の「子育てする権利」を取り戻せ!競争意識の強い男性が目指す「新しい男らしさ」とは?

男性の「子育てする権利」を取り戻せ!競争意識の強い男性が目指す「新しい男らしさ」とは?

フリーライターの小林なつめです。

 

2023年11月23日、勤労感謝の日に、トヨタが男性育休の動画を、Xにポストしていた。この動画は、トヨタで実際に育休を取った男性と、その妻のインタビューを中心とした、「育休ドキュメンタリー」だ。

「育休は、休みじゃない」というメッセージと、「子育て以上に大事なプロジェクトは、多分世の中にない」という男性社員のコメントが印象的だった。

このトヨタのポストに対して、ライターのヨッピー氏が、「男性が育休を取るべき理由」を引用RPして、佐賀県の男性育休に関する取り組みを紹介していた。

 

佐賀県の男性育休に関する取り組みとは

2021年に始まった佐賀県の取り組み「ハッピー・ツー・ウイークス」は、男性職員に2週間の育休取得を促す目的で導入された。

育休を取得しない場合にのみ手続きが必要となる仕組みで、「男性も育休を取るのが普通」という雰囲気の醸成を狙った。この取り組みが功を奏し、佐賀県庁では、男性の育休取得率が100%になったという。

この取り組みは、佐賀県知事現職の山口氏が、自身の育休取得の経験をきっかけに発案、導入したものだ。

山口氏は3人目の子どもの出産で妻が入院する間、2週間の育休を取って、上2人の子どもをワンオペ育児したという。当時、山口氏は総務省の職員で、鳥取県長に出向している身。風当たりは厳しかったが、当時の鳥取県知事は「それはいいことだ」と賛同してくれた。

知事のお墨付きで、部長の役職だった山口氏が育休を取ると、職場の雰囲気が一変した。「男性も育休を取っていい」ことを、上司が体現したのだから、当たり前だ。この経験が「ハッピー・ツー・ウイークス」の土台となっている。

 

仕事はもちろん家事・育児もこなす新しい男性像

山口氏とヨッピー氏の対談記事(「育児って、山登りと一緒じゃないですか!?」)を読んだところ、ヨッピー氏が「男性は仕事、女性は家庭」という性別役割分業の影響で、「男性は「社会から育児をする権利を奪われてきた」っていう側面が少なからずある」と発言しており、そういう考え方の男性が、実は上の世代にも結構いるのかもしれないと思わされた。

この考えの裏付けとなりえるのが、「新しい男性の役割に関する調査報告書」によるデータだ。報告書によると、男性としてのアイデンティティや権威を保持しようとする男性ほど、家事頻度が高いという。

「仕事での成功」は、男性アイデンティティを支える大切な要素の1つだ。

よって、この調査では、仕事における競争意識の強さを伝統的な男性性の指標とする一方で、家事頻度の高さを非伝統的な男性性の指標とし、当初は仕事における競争意識が強い男性ほど家事頻度が低いという結果を予想していた。

しかし、結果は真逆で、仕事における競争意識が強い男性ほど、家事頻度が高いという結果が出た。

 

社会の変化に伴い「男らしさ」が進化している

これはなぜか。報告書では、この結果は社会的風潮、ジェンダー観の変化に伴うものだと分析している。

最近では「家事育児は女だけの仕事ではない」「男性も家事労働をすべき」という社会の価値観が強くなってきている。言い換えれば、職業労働だけでなく、家事労働でも「男らしさ」を示せる時代になったのだ。

そんな時代の動きに合わせて、男性たちの意識や態度が変わってきている。驚くことに、男性たちは自ら設定した新たな目標である「新しい男らしさ」へ、シフトしようとしているのだ。

仕事、そして家事・育児…対象が何であれ、「競争に勝ちたい」「できることを誇示したい」という思いが強いらしい。

個人的にはそうまでして「男らしく」ありたいのかと、少し鼻白むくらいだが、仕事と家事、育児を、前向きにこなそうとする男性が増えるのは大歓迎だ。

男性は仕事に邁進し、女性ばかりが仕事に家事に育児にと奔走しなければならず、仕事と家庭の板挟みになって苦しむ構図は、もうまっぴらだからだ。

このように、ジェンダー観は時代背景に応じて日々変わっている。今後の動向を注視したい。

 

 

【参考サイト】

https://twitter.com/TOYOTA_PR/status/1727492165922890192

 


佐賀県知事xヨッピーさん(ライター)が対談!「育児って、山登りと一緒じゃないですか!?」 | 子育てポータル 子育てし大県“さが”|佐賀県
男性の育児はマイナス1歳から 佐賀県の山口知事 – 日本経済新聞
「育休取らぬなら申請必要」 佐賀県、取得率↗へ逆転の発想|【西日本新聞me】
Caring Masculinity(ケアする男性性)|なかそね
新しい男性の役割に関する調査報告書 |笹川財団

『男性危機? 国際社会の男性政策に学ぶ』伊藤 公雄ほか/著 晃洋書房 2022.11
男性の「子育てする権利」を取り戻せ!競争意識の強い男性が目指す「新しい男らしさ」とは?

男性育休カテゴリの最新記事