フリーライターの小林なつめです。
ワンオペ育児の何が問題か
私はワンオペ育児をなくしたい。なぜなら、幼い子どもの命を守らなくてはならない育児は、一人きりで行うべきではないと考えているからだ。もっといえば、ワンオペ育児は、子どもはもちろん、それを行う母親の命をも脅かしかねないからだ。
ワンオペは産後うつの引き金となり、母子の命を危険に晒す。産後うつは元々10人に1人の母親が発症するとされていたが、コロナ禍による「孤育て」で倍増しており、今や4人に1人の割合で「産後うつ予備軍」がいるといわれる。
コロナ禍以前の2015~2016年度の調査によると、産後1年未満の女性の最多の死因が自殺だと分かっている。新型コロナウイルスの影響で、人と人との繋がりがさらに希薄になった現在では、もっと多くなっている可能性が高い。
産後、夫は「家事・育児」で愛情を示そう
多くの夫にとって、妻は大切な人であるはずだ。それなのに産後間もない妻を命の危険に晒すのはなぜか。ほとんどの父親が産後うつの実態を知らないからだろう。
しかし「産後うつなんて知らない」というのは言い訳にならない。出産は妻にとってだけでなく、夫婦にとっての一大事のはずだ。妻に任せきりにせず、自ら学ぶ姿勢で臨むべきだろう。
そして産後の妻に愛情を示せる唯一の方法が、家事・育児だ。残念ながら「愛情」は一筋縄ではいかない、手のかかるものらしい。産後の子どもが小さい時期に、家事や育児にどれだけ取り組んだか。それが産後クライシスや、その後の夫婦関係に大きく影響してくる。
7割もの夫が妻に「ワンオペさせている」
さて、私はこれまで「家事育児に主体的に取り組む夫が増えている」と述べてきた。しかしこれは事実かどうか分からない、私の勝手な希望的観測だ。
実はTwitterなどで育児中の母親の声を目にするにつけ、「もしかして…」と懸念していたことがある。それが「家事育児をする男性が二極化している」ことだ。つまり「やってる人はやっている。やらない人は全然やらない」状態。私は淡い期待を打ち砕かれるのが嫌で、その実態を調べられずにいた。
そんな中で偶然『男性の育休』という本を読んだところ、6歳未満の子どもを持つ男性のうち、なんと7割もの男性が、妻にワンオペ育児をさせていると分かった。
共働きであっても、育児をしない夫の割合は69%。家事をしない夫の割合は76.7%に上る。軽く絶望すらしそうな割合の高さだ。妻にワンオペをさせる夫のことを「ゼロコミット男子」や「イクジナシ夫」と揶揄する言葉まであるのだとか。
しかし、ここで嘆くのはまだ早いようだ。実は男性の育休取得は、家事育児への参加率を上げるきっかけになるという。現状は、元々「家事育児への理解ある夫が取得する」傾向の高い男性育休だが、今後義務化などが進めば、状況は変わっていくかもしれない。
【参考】
『男性の育休』(小室淑恵・天野妙/著 PHP研究所 2020.9)