映画館のレディースデーは男女差別だった?日本は「毎日がメンズデー」なのに

映画館のレディースデーは男女差別だった?日本は「毎日がメンズデー」なのに

映画館のレディースデーは男女差別だった?日本は「毎日がメンズデー」なのに|リアンブルーコーチング舎

フリーライターの小林なつめです。

私は映画が好きで、一時期は映画館にもよく足を運んでいた。お金のない学生時代は、安く映画が観られるレディースデーかレイトショーに行くことが多かった。産後はなかなか行けなかったけれど、少し前に観たい映画があったので、久しぶりに出かけようかと某シネコンの上映スケジュールを覗いたところ…驚いた。「レディースデー」がなくなっている…!

レディースデーは2022年夏になくなり始めた
気になって調べてみると、2021年夏のTOHOシネマズによる廃止を皮切りに、多くのシネコンがレディースデーを廃止したそうだ。だからといって私個人としては、特に文句があるわけではない。なぜなら、それまでレディースデーが設定されていた日は、男女問わず割引がきく形に変更されているからだ。レディースデーがなくなったからといって、特に損をするわけではない。

ただし「なぜ廃止になったのか」は気になった。調べてみたところ、廃止の皮切りとなったTOHOシネマズ公式は、廃止の経緯や理由を明確にしていない。それも踏まえて、メディアの多くが「男女差別に配慮した形だろう」との見解を示している。すなわち「男女平等のために」レディースデーを廃止したというのだ。

「レディースデーは男女差別なのか?」設置理由から探る
ここで疑問に感じるのが、「果たしてレディースデーは男女差別なのだろうか?」ということ。そもそもなぜレディースデーが設けられたのかを考えてみよう。

レディースデーは平日(東京都は水曜日)に設けられていることが多い。単純に考えて、平日に観客が少ないからだろう。平日の観客を増やすには、平日に時間のある人向けの割引サービスを作る必要がある。専業主婦や非正規雇用で働く女性たちは平日休みの場合が多いので、男性よりも女性をターゲットとする方が理にかなっている。

諸説あるが、レディースデーが始まったのは、銀座のミニシアターだという。銀座にはデパートが多く、デパートで働くのは女性が多い。そこでデパートが休みの水曜日をレディースデーとし、デパートで働く女性を狙ったそうだ。

ターゲットを女性としたことは、経済学でいう「価格弾力性」の考え方にも裏付けられる。女性は男性よりも割引やセールといった価格の変化に敏感だ。そのため値下げの効果がより顕著に表れる。女性同士の口コミによる集客効果も期待できる。

男女の経済格差からもレディースデー設置には説得力がある
割引の対象を女性としたことは、男女の経済格差という視点からも正しい。日本の男女間の賃金格差は、先進国(OECD諸国加盟国)の中で、韓国に続くワースト2位だ。

国税庁の「民間給与実態統計調査」(2020年)によると、女性の平均給与が約293万円であるのに対し、男性の平均給与は約532万円と、女性の1.5倍以上。平均給与の差が240万円近いのだから、映画館に限らず男性よりも女性向けの割引サービスが多いのは、妥当だとは考えられないだろうか。

毎日がメンズデーの日本では週イチのレディースデーでさえ許されないのか?
一時期、ネット上で男性がレディースデーに目くじらを立てる風潮があったが、給与の差を見ると「日本は毎日がメンズデーなのに、たまのレディースデーさえ許されないの…?」と、やるせない気持ちにさえなる。

ちなみにレディースデー発祥の映画館とされるのは、私が一時期、仕事帰りに足繁く通っていた、銀座のミニシアターだ。懐かしくなって調べてみると、まだレディースデーが残っていて、なんだかホッとした。

だが一方で、HPには「映画美人」なるコンテンツがあり、映画館を訪れた女性たちの写真が載せられていて、時代錯誤な印象を受けた。結局のところ、レディースデーは、「良くも悪くも「古き良き」価値観なのかもしれない…」と考えさせられたというオチがついてしまった。

 

【参考】
なぜ終了?映画館「レディースデー」で気づく男女格差 | メディア万華鏡 | 山田道子 | 毎日新聞「経済プレミア」
レディースデー -なぜ世の中では女性ばかりが優遇されるのか? | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)
映画のレディースデー廃止、この流れは止まらない? | RadiChubu-ラジチューブ-
映画館の【レディースデー】っていつから始まった? なぜ水曜日? | Oggi.jp
男女賃金格差の解消方法とは?現在の日本の状況や男女賃金格差解消に向けた方法について解説します | 勤怠管理コラム(総務・人事のお役立ちコラム) | クラウド勤怠管理システム「AKASHI」
「世界でワースト2位」日本の男女賃金格差が全然埋まらない理由2つ 女性の賃金カーブは20代から横ばい | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)

『どうして男はそうなんだろうか会議』澁谷知美・清田隆之/編 筑摩書房(2022.8)p.232-233

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