【本レビュー】矛盾に満ちた世界で最適な問題解決をはかる「パラドックス思考」 舘野泰一・安斎勇樹 著

【本レビュー】矛盾に満ちた世界で最適な問題解決をはかる「パラドックス思考」 舘野泰一・安斎勇樹 著

 

【本レビュー】矛盾に満ちた世界で最適な問題解決をはかる「パラドックス思考」 舘野泰一・安斎勇樹 著

立教大学経営学部准教授 舘野泰一氏と株式会社MIMIGURI代表取締役Co-CEOの安斎勇樹氏による書籍。

MIMIGURIさんがやっているCULTIBASEラジオで、安斎氏と舘野氏のお話を聴いた時からお二人にはそれぞれ興味を持っていた。安斎氏は「問いかけの作法」を出版され、舘野氏はCULTIBASE Labで「リーダーシップの最新知見」など登壇されてもいる。

このお二人が本を出版すると、どんな形になるのかとても楽しみにしていたが「パラドックス思考」「感情パラドックス」に軸を置いてくれたことは、コミュニケーションやコーチングを主体に組織変革を探りたい私はとても嬉しかった。

「天邪鬼」「嫉妬心」などビジネスの現場では持ち出されない(研修中に発言すると、「何?」って怖い顔をされる・・・)感情を表舞台に出してくれたことは、とても有難い。また、事例も多く載せてくれているのでイメージやワークがしやすいのはもちろんだが、、最近の20~30代の方々の見ている世界や感じているものへの記述もあり、アラフィフからすると興味深い。

などなど以下、私の独りよがりの抜粋に目を通して頂ければ、お分かりになると思う。

しかし、なによりも私がこの本に共感しているのは、常々感じていた「人間はかよわく、もがきながら、強がったり、落ち込んだり、言い訳したり一生懸命生きている愛らしい存在である」という私の想い(興味?)と一致した言葉を、堂々と提唱してくれているからである。こんなに心強い後ろ盾はない。

 

リーダーはまず、自分の中の矛盾した感情に気づくこと。「そんなのない」ではなく人間誰でも持っているのだから、怖くてもそこに目を向けること。そんなことを応援してくれる一冊。
そこから適応課題も技術課題も解決に向かうヒントが得られるのだ。

 

パラドックス思考 ─ 矛盾に満ちた世界で最適な問題解決をはかる

【本レビュー】矛盾に満ちた世界で最適な問題解決をはかる「パラドックス思考」 舘野泰一・安斎勇樹 著【本レビュー】矛盾に満ちた世界で最適な問題解決をはかる「パラドックス思考」 舘野泰一・安斎勇樹 著

感情パラドックスに目を向けてみると、実に人間らしい、矛盾に満ちた”曖昧さ”が浮き彫りになります。

ややこしい問題を解決するためには、まず自分の「感情パラドックス」を解きほぐさなければならない。筆者らはこの「感情パラドックス」に目を向け、今までにない新たな問題解決の方法論を探ることにしました。

 

本書が提案する「パラドックス思考」とは、問題の背後にある「感情パラドックス」に着目するすることで、矛盾に満ちたややこしい問題の解決法を体系化したものです。

 

パラドックスの基本パターン

1 パターン【素直⇆天邪鬼】
2 パターン【変化⇆安定】
3 パターン【大局的⇆近視眼的】
4 パターン【もっと⇆そこそこ】
5 パターン【自分本位⇆他人本位】

 

パラドックス思考の3つのレベル

レベル① 感情パラドックスを受容して、悩みを緩和する
レベル② 感情パラドックスを編集して、問題の解決策を見つける
レベル③ 感情パラドックスを利用して、創造性を最大限に高める

 

ビジネス書に頻出する「VUCA」という言葉の本質

VUCAとは、(変動性)Volatility、(不確実性)Uncertain、(複雑性)Complexity、(曖昧性)Ambiguity

V&U→この先どうなるかわからない
C&A→何が起きているのかわからない

VUCA

どうすればうまくいかないのかわからない

ストレス感情

自分が何をしたいのかわからない  ⇐自分の感情に向き合えない

 

さらにVUCAは、私たちの「リソース(人で、物質、予算、時間など)」を慢性的に枯渇させます。

これによって考えるための精神的余裕と体力が奪われ、ますます「わからない」状況が悪化していく。
これがVUCAが「厄介な問題」をより「厄介」にさせる構造なのです。

 

人間とは、めんどくさいけれど愛らしい、矛盾に満ちた存在である

 

組織の構造によって生み出される感情パラドックスの例

例「関係を維持したい」けれど「集団を活性化したい」
例「組織に利益を生み出したい」けれど「他の部署には負けたくない」
例「長期的なビジョンを実現したい」けれど「現場の目先の課題を解決したい」
例「権限委譲して部下に任せたい」けれど「自分なしでうまくいっては困る」

 

社会の構造
降りたくても降りられない”無理ゲー社会”

政治と経済のシステムが生み出す、競争と共同のパラドックス
資本主義は「競争」を煽り、少数派の勝者に総取りさせる
民主主義は「共同」を期待し、多数派の合意を尊重する
降りたくても降りられない、行きすぎた資本主義
負けたくないが、勝てる気もしない、戦意喪失社会
知名度がものを言う社会が”炎上”の不安を日常化させる
社会統治と監視のパラドックス

 

社会の構造によって生み出される感情パラドックスの例
例「競争に負けたくない」けれど「他人を蹴落としたくない」
例「このゲームから降りたい」けれど「ゲームの歯医者にはなりたくない」
例「リスクを低減して安心したい」けれど「刺激のためにリスクは厭わない」
例「規範を守ってほしい」けれど「規範から逸脱してほしい」

 

最初に書き出した感情(Before)例
・”よい課長”になりたい
・もっと部下に熱心に本業に取組んでほしい
・1on1でうまくフィードバックしたい
・部下に過度にイライラしたくない

感情を深堀した後(After)例
・”よい課長”として自信を持てるようになり、仕事に喜びを感じたい
・もっと部下に愛情を持って接し、寛容でありたいと思っている
・厳しくしどうすべき問題行動ではないのに、部下に過剰な嫌悪感を感じている
・部下に対して興味を持っているものの、自分にはない才能の発揮に警戒や不安を感じている部分もある

 

心の奥底の「隠れた感情」を発掘するテクニック
1 反転感情チェック:真逆の感情があるとしたら?
2 嫉妬心チェック:嫉妬していることはないか?
3 承認欲求チェック:言われると嬉しい誉め言葉は?
4 優柔不断チェック:なかなか決められないことは?
5 制約撤廃チェック:もしあの制約がないとしたら?
6 他人視点チェック:周囲からのツッコミどころは?

 

感情パラドックスを編集する手順
STEP1:犠牲のストーリーを特定する
STEP2:水かrなお感情を深堀する
STEP3:感情A・Bの関係性について整理する
ATEP4:両立のストーリーを検討する

 

”ウルトラC”の解決策を見つける「包含戦略」

 

すぐに実践できるポイントを2つ
1 「人間はめんどくさいけれど、愛らしい存在」と考える
2「矛盾を遊ぶ」経験を積み重ねる

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