【本レビュー】リーダーが覚えるコーチングメソッド マイケル・バンゲイ・スタニエ著

【本レビュー】リーダーが覚えるコーチングメソッド マイケル・バンゲイ・スタニエ著

【本レビュー】リーダーが覚えるコーチングメソッド マイケル・バンゲイ・スタニエ著|リアンブルーコーチング舎コーチングスキル研修をやっていてもどかしいのは、プロのコーチが使っているようなスキルを使えるようになるまでに時間がかかること。

しかし本当のところ、組織内ではそんな高等なスキルは望まれておらず、すぐに使えるスキルが求められている。そこで昨今取り入れられてきたのが、1on1という方法だが、報連相レベルで終わっていることが多く、確かにこれまで時間が持てなかった二人で会話を交わす時間を過ごすは効果があるのだが、ワンランク上の会話から生まれる組織変化には、今一つもどかしいさを感じる。

実際のところ、下記のようなデータがあると知り、残念で仕方がない。

試したが失敗した人が多い

2006年の調査 管理職の73%が何らかのコーチングの訓練を受けた
訓練を受けた管理職のコーチングを受けて仕事の成果や満足度が大きく改善したと感じた人は23%
10%はむしろ悪い影響を受けたと答えている。

原因はコーチの間ではよく知られている。

効果的なコーチングを受けていないと、効果的なコーチングは実行できない。

あなたが効果的なコーチングを実行できないのは、あなたには効果的なコーチングを受けた経験がないから

習慣が身に付かない理由
①自分が受けたコーチングのトレーニングが理論的すぎ、あまりにも複雑で、いささか退屈で、多忙な現実にそぐわない
②新たな知見を行動につなげる方法を考える時間がなく、学んだものと違うやり方をしてしまう
③助言を少し減らして質問を増やすという、簡単そうな行動の変更が、実は驚くほど難しい。会話の主導権を失ったように感じてしまう

一方で、コーチング研修を組織に取り入れる理由として多いのは「組織のため」であるが、そのために私がコーチングやコミュニケーションスキルを伝える時には、「リーダーであるあなたの負担を軽くしながら、メンバーが自主的に動いてくれる環境をつくりだすため」だと伝えている。

今でも十分に支援しているという意識が、コーチングの機会を増やすのを妨げている。

リーダーのあなたが人をコーチングすることが、なぜあなた自身のためになるか。
■あなたの仕事の量を減らし、影響力を高める
ー悪循環1:過度の依存を生む
ー悪循環2:過剰な仕事に圧倒される
ー悪循環3:重要な仕事に関われない

 

ビジネスでは成果に目が行くが、成果のためには個々の成長が不可欠であるのに目がいかないことが多い。

そしてこの本では、たった10分でコーチング会話が出来るための、7つのシンプルな質問が紹介されている。
研修講師やプロコーチにとっては物足りないと感じてしまうだろうが、これからはコーチングとはこのくらい簡単で、普段の会話の中で交わすことが出来るものなのだという、パラダイムシフトが不可欠だと思っている。

60分のセッションがスタンダードだとされているのは、もはや時代遅れだと言わざるを得ない。

成果のためのコーチング→成長のためのコーチング

1.会話に弾みをつける質問:「何を考えているんだい」→プロジェクト・人・パターン
2.AWE質問:「それで他には?(And What Else?)」
3.焦点を絞る質問:「今、きみにとって本当の問題は何だろう?」

この3つの質問を組み合わせると、コーチング・カンバセーションのしっかりした台本が出来上がる。

この3つの質問だけでパワフルだ。まずはこのフレーズだけ覚えるだけでいいと断言できる。

 

ここから先は、コーチングを肉づける質問や知識で、私の備忘録のためにも記しておく。

4.根本的質問:「何を求めているんだい?」

ピーター・ブロック 「YESから始めよう!ーいつも「HOW(どうやって)?」って言ってしまうあなたへ」著者

「自由に対する責任感を人々に与える」仕事
ピーター・ブロックが言っている「自由とは何か?」
→「仕事において大人として振る舞うと同時に周囲の人々を大人として扱うこと」と答えるだろう。
→大人同士の関係=「答えがノーかもしれないのを承知のうえで、自分が望んでいることを頼める」関係

 

マーシャル・ ローゼンバーグ「NVCモデル」
人間の普遍的で自明な9つのニーズ
「愛情・創造・レクリエーション・自由・アイデンティティ・理解・参加・保護・生存」

 

人間の脳は1秒間に5回、無意識のレベルで周囲の環境を調べ、安全か危険か自問している

進化バイアスで”危険ではない”と考えるより”危険だ”と考えがち
人類の進化の過程で成功した生き残り戦略は「後悔より安全」

人は、よくわからない場合は、デフォルトで危険と判断する。そして後退しはじめる

他者の脳と自分の脳に、リスクではなく報酬が得られる状況にいつと理解させるにはTERA指数を増加させる
・T:仲間(tribe『補足説明共通の興味・関心やライフスタイルを持った集団』)
・E:予測(expectation)
・R:地位(rank)
・A:自主性(autonomy)

 

5.横着な質問:「何か手伝えることがあるかな?」
6.戦略的な質問:「これにイエスというなら、何にノーなんだい?」

 

相づち「素晴らしい」「気に入ったよ」「いいね」「すごいな」「うん、それはいい」「うーん、なるほど」

 

1~3の質問に加え、7の質問があれば、立派なコーチングになる。
そのためにはリーダーは喋ることを我慢し、沈黙をひたすら待つ。これが一番の難関かもしれない。
だけど、コーチングを身につけたかったら、これしかない。口を閉じる。話すまでニコニコ笑ってひたすら待つ。(元国際コーチング連盟日本支部代表の林健太郎氏もここは何度も何度も何度も伝えている)

7.学習のための質問:「きみに一番役立ったのは何だろうか?」

人が学習を始める、つまり新しい神経経路を作りはじめるのは、出来事を思い出し、それについて熟考する機会があった時だけ

リーダーの役割は、学習の瞬間のために”考える余地”を作ること。

長期記憶の4つの主要な神経学的原動力のうち「生成」=「新たに提示されたが稲に対して自分自身とのつながりを作りだす行為」
→「知識をただ読むのではなく、知識を生成し、答えを見つけるために時間と労力をかけると、我々の記憶が高められる」

生成や情報検索のプロセスを利用して、学習結果を深く根づかせるための質問は数多くある
「何を学んだのかな?」「どんな発見があった?」「憶えておきたいtのは何だろう?」「取り入れるべき重要なことは何だい?」

これは、研修講師も使えるスキルで、振り返りの時間はとても大事だ。新しい情報を与えるよりも、振り返りの時間を優先させてもいいくらいだと思っている。

 

【まとめ】
コーチングスキルを身につけたい人は、これくらいシンプルなものから、スタートして欲しい。
サッカーで言う「走る」「蹴る」「止める」「リフティング」だ。繰り返しやって、体に染みついてから「足技」「オフザボール(ボールがない時の動き」「戦術」が生きる。

幸いなのは、基本を繰り返しやるのは「退屈」だけど、ビジネス環境であれば「退屈」を感じている暇はないこと。だから忙しい間にとにかく基本を繰り返して欲しい。
部下や後輩が、「?(何を言っているんだ?)」と思ったって問題ない。「練習してるから」「次にまた訊くから」といいながら、「この人はまた訊くんだろうな」と思ってくれるまで、ただ繰り返す。その間に英会話を憶えるように、あなたにこれらのフレーズが身についているはず。

何よりも”リーダーであるあなた自身のために””あなたの人生のために”使えるスキルになることを、心から祈っている。

 

余談であるが、日本で短い時間や日常のなかで使えるコーチング会話を学びたいのなら、コーチング忍者がお勧めです。
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