【本レビュー】昭和生まれの先輩・上司は読んでください。「先生、どうか皆の前でほめないで下さい:いい子症候群の若者たち」

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【本レビュー】【本レビュー】昭和生まれの先輩・上司は読んでください。「先生、どうか皆の前でほめないで下さい:いい子症候群の若者たち」|リアンブルーコーチング舎

 

先生、どうか皆の前でほめないで下さい: いい子症候群の若者たち 金間 大介著
【本レビュー】昭和生まれの先輩・上司は読んでください。「先生、どうか皆の前でほめないで下さい:いい子症候群の若者たち」

 

「いい子症候群の若者たち」という言葉がひっかかり、早速手に入れた。
というのも、コロナの始まる前の2018年、新入社員フォローアップでの会話を聞いていて、「何かが変わってきた」という感じがあったからだ。

新入社員フォローアップでは、入社してから今日までの振返りや悩みや感じている事、これから目標設定などをする。その時の参加者は、いくつかの企業の新入社員が混ざっての研修だった。

緊張が解け、自分の話をしたり、質問したりするのに抵抗がなくなった時、ある一人がポロっと口に出した。

「うちの会社って普通なんですかね?」

とっさに浮かんだのは「えっ?」という疑問。思わず聞き返した?
多賀「どういうこと?」
新人「いや、他と比べて普通なのかな?って」
多賀「普通だったら嫌なの?」
新人「そういうことではなく、社会的に普通なのかなって」
多賀「それがわかったらどうなの?」
新人「別に何ってないんですけど、どうなのかなって」
多賀「まあ、あなたの会社はいろいろ斬新なアイディアを形にして業界的にも目に留まるから、普通ではないと思うけどなぁ」
新人「あー、そうなんですね。ふーん」
多賀「まあ、企業それぞれだし、これが標準っていう「普通」ってないと思うよ」

会話はこれで終わり、特に何を得たわけでもなく、確認したかっただけのようだ。
しかし、このやり取りを聞いていた他の新人たちも「じゃあ、うちの会社はどうですか?」と訊いてくる。

私の頭の中は、???がいっぱい。
普通だから嫌だ、普通じゃなのが嫌だ。というのであれば納得できるが、今の会社は普通なのか確認するだけの会話は初めてだった。

私の体験の前置きが長くなってしまったが、そんなわけで若者たちの視点が変わっていることに気づき、何が起こっているのか?を知りたくて、この手に取った次第だ。

(ちなみに、KY(空気を読め)が流行った時には「透明人間になりたがる若者」が多いなあと感じていたので、それにプラスして「普通を確認したがる若者」が、私の若者観に入ってきたのだ)


著者の金間大介氏は、金沢大学教授。大学生と触れている中で感じたり、やり取りしたことを中心に書いていて、文章が口語体で書かれていたり、自虐ネタも入っていてとてもおもしろく読みやすい。&羨ましい。

各章のタイトルや見出しだけで、十分に興味が湧くと思うし、詳しい内容はやはり本を手に取ってほしいので、多賀が気になった各章タイトルと見出しだけ抜粋であげてみる。

第1章 先生、どうか皆の前でほめないで下さい
・「目をつけられる」の新しい意味
・匿名にしたとたん手が挙がる
・「ほめ」は「圧」

第2章 成功した人もしない人も平等にしてください・・・どんなときでも均等分配
・なぜ若者は競争が嫌いなのか

第3章 自分の提案が採用されるのが怖いです・・・自分で決められない若者たち
・決めるのが怖い
・親に決めてもらえればがんばる
・選択の決め手はインフルエンサー
・消費行動さえも自分で決めない
・皆で決めました
・自分のせいにされたらどうしよう
・究極のしてもらい上手

第4章 浮いたらどうしようといつも考えています・・・保険に保険をかける人間関係
・浮かないために行列に並ぶ
・もう「意識高い系」とすら言わない
・競争より協調
・協調より同調
・場を乱さないために演技する

第5章 就職活動でも発揮されるいい子症候群・・・ひたすら安全を求めて
・どのような研修制度がありますか
・上司からの質問を同期に相談する
・職場の飲み会には参加する

第6章 頼まれたら全然やるんですけどね・・・社会貢献へのゆがんだ憧れ
・若者にとっての社会貢献とは何を指すのか問題
・びっくりするほど強い劣等感
・自分に自信はないけど社会貢献はしたい
・献血はしないけど社会貢献はしたい

第7章 自分にはそんな能力はないので・・・どこまでも自分に自信のない若者たち
・決定的に低い自己肯定感と有能感
・備えれば備えるほど憂う日本人

第8勝 指示を待ってただけなんですけど・・・若者たちの間に広がる学歴社会志向とコネ社会
・若き指示待ち待ち集団
・むしろ若者の間で強まるコネ志向

第9章 他人の足を引っ張る日本人・・・若者たちが育った社会
・意地悪な日本人
・ただ乗りの報酬
・若者に期待する権利はあるのか
・若者は現役選手しか尊敬しない

第10章 いい子症候群の若者たちへ・・・環境を変える、自分を変える
・仕事に普通なんてない
・空気と同調圧力の発生源
・あなたは伸びている

第1章から目から鱗。まるで新しい辞書のようだ。
「「目をつけられる」の新しい意味」とは、先生が質問した時に答えてしまったこと。連続で答えられた時などに使うらしい。この対策としては「わからない振りをして答えないこと」だそうだ。

どうだろう?もはや何と声を掛けたらいいのかわからない。結果から言えば、学生がわかっているのなら、それでいいのだから、質問が意味をなさないことになる。

「匿名にしたとたん手が挙がる」のは、学生だけではない。研修をやっているとよく遭遇する。オンラインになってから特にそうだ。どんな年齢でも大勢の前では、どんなに促したり場を緩めても質問しないでシーンとしているのに(ミュートのせいではない)、ブレイクアウトに入ると喋る喋る!

 

結局は、我々たちがつくり出した社会・価値観・風習が、今の若者たちをつくり出したのである。よかれと思ってやってきたことが、このようになったのだ。一つの成果と言える。

だから若者たちを批判する事なんてできない。メンタルが弱いなんて一言で終わらせるような話ではないのだ。

まずは、そういう若者を理解しつつ、我々昭和世代から変わる必要を感じる。

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