フリーライターの小林なつめです。
私は社会人になってから、女性の多い職場でしか働いたことがありません。
しかも私は図書館司書という、「好き」に直結した仕事をしているので、一緒に働く仲間たちは、男女問わず前向きに仕事をしている方が多く、イキイキと志高く働いている人がほとんどでした。
今は小学校で働いていますが、この職場もまた女性の比率が大きく、誰もが自分の仕事に誇りを持って、子どもたちと向き合っています。
このような環境では、一般的な男女のパワーバランスに、あまり意識が向きません。
数のうえで女性優位の環境で、加えて管理職にも女性が多いので、「女性が男性に遠慮する」ような場面が、極端に少ないからです。
男女両方が同席する会議の場でも、女性が「自分が女性だから」という理由で発言をしない、できないシーンを体感したことは、あまりありません。
私はこういう感覚の持ち主なので、パーソル総合研究所による「職場での対話に関する定量調査」を見て、「こんな会社があるのか」というギャップすら覚えました。
しかし、この調査は「全国の男女・正規雇用就業者(年齢20-64歳)6000人」を対象に行われており、私の肌感覚よりむしろ、社会のリアルを表しているはずです。
調査によると、「過半数の従業員は、職場で本音をほとんど話していない」。その要因の1つ「身分不相応リスク:自分の立場では言えない」は、特に女性に多くみられるそうです。
性年代別のリスク意識の高低を表すヒートマップを見ると、この「身分不相応リスク」は、男性にはあまりみられない、女性特有の要因だと分かります。
出典:パーソル総合研究所「職場での対話に関する定量調査」
つまり、女性は男性と比べて、自分の立場やキャリア、発言に自信を持ちにくいという傾向があるようなのです。
この結果を見て、身分不相応リスクの低い男性はどう感じるでしょう。
「女性には自信のない人が多い」「女性は自分の発言に責任を持てない」…このように、「女性だから」身分不相応リスクが高いと考えてしまうのではないでしょうか。
しかし、実際にはそうではないだろうと、私は自分の経験から確信がありました。
そこで、この調査と結果について、新卒で入社した大手企業に10年以上勤めている、大学時代からの友人Aに、意見を聞いてみました。
すると彼女もこの結果には、あまりリアリティを覚えないと話してくれました。
ざっくりまとめると「回りの女性社員に身分不相応リスクの高さを感じたことはなく、職場には、女性が本音を話しにくい雰囲気もない」とのことでした。
私と彼女の職場の大きな共通点は、やはり「男女比に差がないこと」です。
話を続けていると、男性優位の職場だと、調査結果のように、女性の身分不相応リスクが高くなるのではないかという結論に落ち着きました。
「女性だから自分の発言に自信を持てない」のではなく、「女性のキャリアにおける自信は、職場環境、中でも性別構成に大きく影響される」のではないでしょうか。
同調査によると、職場での対話の本音度合いが高いほど、「パフォーマンス力」や「はたらく幸せ実感」、さらには「ワーク・エンゲイジメント(仕事に対しての活力・没頭・熱意といったポジティブな心理状態)」が高い結果となっています。
出典:パーソル総合研究所「職場での対話に関する定量調査」
性別を問わず、仕事のパフォーマンス力、ひいては会社の人材力を上げていくには、会社人員の男女構成比を、なるべく同等にする必要があることが分かるのではないでしょうか。