フリーライターの小林なつめです。
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昔、インスタントラーメンのCMで「私作る人、僕食べる人」というキャッチフレーズが使われていたのを知っていますか?
1975年と、ずいぶん前のCMなので、若い方は知らないかもしれません。
実はこのフレーズは、広告としては初めて、ジェンダーの視点(性別役割分担、ジェンダー・バイアスの側面)から批判されたものだといわれています。
今、このフレーズをCMで使おうものなら、一般の視聴者から苦情が寄せられ、SNSでも炎上必至だと、簡単に想像できますが、当時、この感覚は一般的ではありませんでした。
事実、当時このCMを批判した「国際婦人年をきっかけとして行動を起こす女たちの会」という女性団体は、ずいぶんと非難や揶揄・中傷に晒されたといいます。
当時の週刊誌は、同団体の行動を「エキセントリック」で「ヒステリック」、指摘内容は「被害妄想」だと、今となっては使い古された「女性差別の定型文」を多用して、こぞって取り上げています。
「行動を起こす女たちの会」は、この事件の締めくくりに「80年代は、ふつうの女たちがみな、もっと自由に自分の人生を生きられる時代にしたいと思います。~中略~すでに自分の人生を、しなやかに、したたかに生きている女たちが、あなたのすぐそばに確実に増えていることを知ってほしいと願ってこの記事をつくりました。」という記事を寄せています。
一連の騒動は、SNSによるCMの「ジェンダー炎上」の原点となっており、「女性もものをいう」ことが、男社会だった当時の世間に知らしめられた事件でもあったようです。
「私作る人、僕食べる人」の場合、料理という家事に焦点が当てられていますが、女性にケア役割を求める風潮はまだまだ残っています。
くだんのフレーズを文字って「私ケアする人、あなたケアされる人」とでもいいましょうか。
例えば先日私は、ラジオパーソナリティ(男性)が、妻との関係性について話していて、「ケンカしても折れるのは絶対こっち。家事をしてもらえなくなると困るから」と言っているのを聞きました。
職場でも年配の男性が「家を牛耳っているのは妻で、自分は(家事に)手出し・口出しできない(しない)」と話しているのを聞きました。
私自身、TVである俳優が「お母さんの仕事は大変」と言ったことをSNSで指摘して、大炎上した苦い経験があります。
結局はまだまだ、世間の多くの男性が妻である女性に家事や育児全般(ケア役割)をしてもらっていて、口先では「妻には頭が上がらない」と言う夫婦像が一般的なのです。
ケアするのは女性で、されるのは男性。この固定概念はそう簡単には薄まらないようです。しかし、男女平等社会を実現するためには、このイメージを根底から覆す必要があるでしょう。
【参考】
■「私作る人、僕食べる人」広告・CMの性別役割の押し付け、なぜ炎上40年も繰り返す? | 概要 | AERA dot. (アエラドット)
■ 大泉洋、「お母さんの仕事は大変」の“失言”を挽回!? 『おしゃれイズム』で娘エピソード語り「いいお父さん」の声(2021/01/17 15:00)|サイゾーウーマン