フリーライターの小林なつめです。
私は普段、学校司書として働いていて、絵本を読む機会がよくあります。
共働きの家庭におすすめしたい『いってらっしゃーいいってきまーす』
今回は、私の好きな絵本の1冊『いってらっしゃーいいってきまーす』(神沢 利子 作/林 明子 絵)を紹介します。
私がこの本に好感を持った理由は、1983年に発表されたにもかかわらず、家族像がとても先進的で、共働きの両親と、保育園に通う子どもの日常が瑞々しく描かれているからです。
物語のあらすじを簡単に紹介します。
主人公は、保育園に通う「なおちゃん」。
なおちゃんのお母さんは会社員で、お父さんは絵描きです。
朝、お母さんが出勤した後、お父さんがなおちゃんを自転車で保育園に送ります。なおちゃんは保育園で自分の日常を過ごし、夕方になると、お母さんが迎えに来て、家に帰ります。
書かれているのは、ただそれだけの内容。でも、その中身は、子どもの視点から見た「きらめき」に満ちています。
大人からすれば「ただの日常」でも、子どものフィルターを通すと、何でもない日常が、かけがえない1日1日の積み重ねなのだということを実感できます。
共働きの家族に、ぜひおすすめしたい絵本です。
75年前のアメリカの家庭を描いた『スモールさんはお父さん』
もう1冊紹介したいのが『スモールさんはお父さん』(ロイス・レンスキー 作)という絵本です。
スモールさんの絵本のシリーズは世界的に有名で、「ちいさいしょうぼうじどうしゃ」「ちいさいきかんしゃ」「スモールさんののうじょう」などがあります。
どの作品もスモールさんが主人公で、スモールさんがそれぞれの仕事に就いている体で、仕事の詳細を紐解いていく内容になっています。
「スモールさんはお父さん」は、そんな「働く男性」であるスモールさんの、家族に焦点を当てたお話です。
この絵本は1951年にアメリカで出版されたものです。当時のアメリカの世相を映していて、スモールさんは外で仕事をしていて、妻は専業主婦として、家で育児や家事をしています。
ここまでは想定内の内容です。私が驚いたのは、「お父さん」であるスモールさんの立ち居振る舞いです。
例えば月曜日、スモールさんは仕事から帰宅して、洗濯物を干します。木曜日には、台所の水漏れを直します。
家の飾りつけをするのが好きで、時には、壁におかあさんの好きな絵を掛けたりもします。
金曜日には、草刈りをします。草刈りや子守りを子どもたちが手伝い、この間「おかあさんはひとやすみ」します。
土曜日、スモールさんの運転で買い物に行きます。家族みんなで畑仕事もします。
日曜日には家族で教会に出かけ、お父さんは料理を手伝い、配膳もします。午後には家族をドライブへ連れ出し、子どもたちに寝る前のお話を読んで聞かせます。
スモールさん、仕事もバリバリやっているにもかかわらず、家での活躍っぷりときたらどうでしょう…!?時には、家事育児で疲れている妻をねぎらって、休ませさえする心遣い。
現代ではなく1950年と、約75年も前のお話しとは思えないくらいです。
「男性の家庭進出」こそ円満な家庭を築くコツかも
スモールさんは、日本の一般的な家庭における男性のように、家事や育児を全て妻に任せるのではなく、当たり前のように、自分も自分にできることを、積極的に買って出ています。
私はこの本を読んで「さすがアメリカは核家族の国。彼らは核家族のプロなんだ…!」と、衝撃を受けました。
日本では夫が「家に居場所がない」と言ったりしますが、スモールさんを見ていれば分かるように、家庭での自分の居場所は、自分で作る努力をする必要があるのです。
もう何十年も「女性の社会進出」を進めようとしている日本。やはり先に行うべきは「男性の家庭進出」なのではないでしょうか。