すね毛はムダ毛?脱毛とルッキズムについて考える

すね毛はムダ毛?脱毛とルッキズムについて考える

すね毛はムダ毛?脱毛とルッキズムについて考える

フリーライターの小林なつめです。

 

かつて私が東京で電車通勤をしていたころ、イヤというほど見かけたのが、脱毛に関する車内広告でした。

それは電車に乗る人なら誰もが目にするもので、「脇や足などのムダ毛は醜いもので、女性は生やしておくべきではない」という、強いメッセージ性をはらんでいました。

特に私が問題だと思ったのは、高校生はもちろん、中学生や小学生といった女の子たちを対象とした広告です。

実際、ここ10年ほどで、脱毛を希望する小中学生は急増しているそうです。
(参考:NHK みんなでプラス「『子どもの脱毛』安全性は?何歳から?リスクや注意点をまとめました」

「ムダ毛のない姿が美しい」という価値観を持つ大人の女性が、自分の意思で脱毛をするのと、倫理観や論理的思考が未熟な子どもが「ムダ毛は醜い」という社会の雰囲気や刷り込みから、脱毛を希望するのは、全く異なる話だと、私は考えます。

脱毛の広告によって、脱毛の若年化が進むのは、ルッキズム(外見重視主義)がエスカレートしている悪影響ではないでしょうか。

「多様性を認めあおう」という時代に、どこの部位のどの毛がどれだけ生えていると美しい、醜いとジャッジするのは、ナンセンスなのではないかと感じます。

と、私が主張するまでもなく、今や世の中の多くの人が、「脱毛広告」に、疑問や違和感を抱いており、「現代日本の「脱毛プロパガンダ」」と題された論文も存在するほどです。

 

刃物メーカーの貝印は、2020年に「ムダかどうかは、自分で決める。」という広告を打ち出し、話題となりました。2022年にはカミソリメーカー大手のSchick(シック)も「“ムダ毛”という表現やめます」という宣言をしています。

こうした世の中の流れに共感した人は、私を含め、少なからずいたのではないでしょうか。

先日、靴下の製造・販売を行うタビオ株式会社のSNSの投稿が注目を集めていました。

「80デニールの方は、このくらいのすね毛は隠しちゃうカバー力あります。」と、自社製品であるタイツの試着画像をつけた投稿に対するフォローとして、以下の投稿をしていたのです。

 

 

「脱毛はやろうがやるまいが、個人の自由。人に押し付けられてやるものではない。でもファッションという側面から見ると、ない方がいいときもあるから、隠すのも一つの手だよ」という提案で、自社製品を宣伝しているのです。

タビオという会社の価値観や理念をも感じさせる、秀逸な投稿だと感じました。

タイツ業界というと、2020年に起きたアツギの事件※が今も忘れられませんが、今回の投稿は、それとは真逆のベクトルで印象に残りました。

また、興味深いことに、アツギのSNS担当者は女性、タビオの発言者は男性です。結局、重要なのは性別ではなく、個人の持つ価値観や倫理観なのでしょう。

やはりメーカーなどの企業、特にSNSなどでの宣伝・広告を行う担当者には、ジェンダー観のアップデートが急務なのだと、改めて感じさせられました。

※キャンペーンの一環として、女性を性的に描いたイラストを多数投稿し、炎上、自社製品の不買運動にまで発展した事件

【参考】
生足がいいけど肌寒い人に向け…”体張った”検証で一時売り切れも カバー力に「すごい説得力!」「打ち身とかも隠してくれそう」|まいどなニュース
子どもの脱毛 何歳から?キッズ脱毛は危険?リスクや注意点について – #これからの育児 – NHK みんなでプラス
[論文] 現代日本の「脱毛プロパガンダ」:脱毛広告の表象分析を中心に | CiNii Research
「ムダかどうかは、自分で決める。」貝印の広告がSNSで話題、剃毛や脱毛の多様性を表現
剃る一択じゃない。「“ムダ毛”表現やめます」カミソリ大手Schickが宣言したわけ | ハフポスト NEWS
「アツギSNS問題」女性担当者でも、ジェンダー炎上してしまうたった一つの理由 「女性を性的に消費」と批判が殺到 | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)
2020年11月2日アツギ社を発端にタイツ業界で起きた4社の旧Twitter炎上事例 | 株式会社 エスファクトリー

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