ルッキズムよりいいじゃん? 「ビジュいいじゃん」という褒めの破壊力

フリーライターの小林なつめです。

 

「ビジュいいじゃん」って何?

最近、勤務先の学校の児童に、よく「ビジュいいじゃん」と言われます。

「ビジュいいじゃん」というのは、ボーイズグループM!LKの楽曲『イイじゃん』の歌詞に由来するフレーズ。ビジュはビジュアル(外見)を略した言葉です。

調べてみると、このフレーズは2025年からSNSで爆発的にバズり、若い世代の間では、あいさつ代わりに使われているそう。

小学生には少し遅れてきた流行りで、勤務校の子どもたちも、しばらくは私に会うたびに「ビジュいい」を繰り出していました。時には顔も合わせる前に言われる日もあり、「まだ顔すら見てないじゃん!」と、笑いながら突っ込むことも。

そんな軽いあいさつですが、嫌な気は全くせず、どちらかというとうれしい気持ちでした。外見にかかわる言葉で、ルッキズム(外見至上主義)にもつながりそうなのに、なぜだろう。

 

「ビジュ」という言葉の持つ魅力

考えてみると、「ビジュ」というワードにヒントがある気がしました。

「ビジュ」という言葉は、周りの誰かと比較して使う言葉ではなく、むしろ「私らしさ」を肯定し、元気づけてくれるように思えたのです。

さらには私単体の見た目だけでなく、服装や雰囲気、その日の調子など、さまざまな要素も含まれていて、かわいいやかっこいい、美人やイケメンなどの容姿を褒める言葉より、表現の幅が広く、深いように感じられました。

 

実際、『三省堂 辞書を編む人が選ぶ「今年の新語2025」』によると、ビジュはビジュアルの略で「アイドルなど推しの対象のメークや服装、全体的な雰囲気も含めた姿形」を指す、と解説されています。

そう、「ビジュ」という単語は、三省堂の辞書編集者による「今年の新語2025」の大賞にも選ばれているのです。

そこでは選考理由が以下のように説明されており、実際に日々そのフレーズを投げかけられていた私の感覚と一致しました。

「イケメン」「美人」など外見をほめる言葉はさまざまあるが、モデルやアイドルの整った美しさを想定したもので、必ずしも多様な美しさを表現するものではない。

「ビジュいいじゃん」から広まった「ビジュ」は単なる外見を超えて、雰囲気や印象、その人らしさを肯定的に捉えるニュアンスがある

出典:「ビジュアルの略語以上の意味を包含した「ビジュ」」三省堂の辞書編集者が選ぶ2025年の新語

 

やはり「ビジュがいい」という表現は、美しさの規範を定める「ルッキズム(外見至上主義)」とは方向性が異なり、むしろ一線を画していると考えてよさそうです。

 

「ビジュいいじゃん」というフレーズが生まれたきっかけ

さらにこのフレーズについて調べると、作詞作曲者の一人、岡嶋かな多さんが、朝日新聞のインタビューで、曲が生まれたきっかけを以下のように話している記事を見つけました。

昨今、女性アイドルグループで、自己肯定感を高めるような楽曲がすごく増えている感覚がありました。一方で、男性たちのそういう楽曲はあまりないなと思ったんです。

普段から、女性同士だと「ネイルかわいい」みたいな話が会話を始めるきっかけになりますが、男性同士で褒め合う文化は日本にはあまりないのではとも考えました。

出典:「「イイじゃん」作詞作曲家岡嶋かな多さん「矢印は自分の外より内に」」朝日新聞

作詞家には「ビジュを褒め合い、自己肯定感を上げる文化が男性には少ない」という気づきがあり、だからこそ、男性グループが歌う曲にこの歌詞を作ったといいます。

 

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性別を問わず使え、相手の自己肯定感を上げ、ルッキズムには荷担しないフレーズ、「ビジュいいじゃん」。今の時代に合った、より多様で自由、ポジティブなフレーズです。

この歌詞、フレーズが若者たちに好意的に受け入れられたのは「最近の若者の、ジェンダーフリーな価値観ゆえかも?」と、また一つ、未来への希望が持てました。

 

【参考】
■マイナビニュース「「今日ビジュイイじゃん」ってどういう意味? 挨拶代わりにも – 「2025年上半期10代女子が選ぶトレンドランキング」発表 」
■nippon.com「ビジュアルの略語以上の意味を包含した「ビジュ」:三省堂の辞書編集者が選ぶ2025年の新語
「イイじゃん」作詞作曲家岡嶋かな多さん「矢印は自分の外より内に」:朝日新聞
■Meiji.net(メイジネット)明治大学「流行語大賞選びでわかる、日本語のしたたかな柔軟さ

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