
フリーライターの小林なつめです。
「小1の壁」とは
子育て家庭なら誰もが知っていて、恐れている「小1の壁」。子どもが小学校に上がることで、保育園時代よりずっと、育児と仕事の両立が困難になる局面を意味します。
困難になる理由は、いくつかあるのですが、その中でも大きいのが、子どもの預け先の確保が難しくなるためです。
そもそも保育園は、共働きなどの家庭で、保護者が育児をできない日中、「家庭の代わりに子どもを預かること」を目的とした施設です。
一方、小学校は、子どもを預かることを目的とする場所ではありません。あくまでも教育のための場所なので、家庭のために子どもを預かってくれるわけではないのです。
保育園は、親の働く時間帯に合わせて保育時間を設定していますが、小学校にはそのような配慮はありません。そこで、朝や放課後、長期休み期間中の子どもの居場所は、親が確保する必要があります。
子どもたちの居場所づくりが進む
頼みの綱は「学童保育所」(※以下、学童)でしょう。
しかし、学童は、今や小1の2人に1人、小学生全体で見ても4人に1人が利用しており、2025年5月時点で1万6330人もの待機児童がいるという現実があります。
この傾向は都市部で特に高く、小1の壁に阻まれ(子どもの預け先が見つけられずに)、退職を含め、働き方を変えた母親が半数近くいるというアンケート結果もあるほどです。
(参考:「小1の壁」で働き方はどう変わる? 退職や時短勤務を選んだママたちの実態調査 – コクリコ|講談社)
この問題に対して、行政や企業は続々と解決策を打ち出しています。
保育時間の長い民間学童の拡大や、企業内学童、病児保育、それらの送迎サービス…授業開始前に登校する子どもを見守る「朝の居場所づくり」に取り組む地域も増えています。
働く親たちが本当に望むこと
でも。本当に親たちが望んでいるのは、こういった支援ではないのです。
親の多くは、社会に、そして自分の勤めている企業や会社に、変わってほしいと思っているのではないでしょうか。
たとえば…
育児中は短時間で働いて、子どもとの時間を確保したい。
フレックス制やリモート勤務を柔軟に認めてほしい。
週休3日制にしてほしい。
せめて残業はしたくない。
でも、残念なことに、社会の変化は遅々としています。勤め先の労働環境が変わる前に、子どもたちは小1となり、親が決断を迫られる現実があるのです。
今ある「小1の壁」への対策は全て、共働き家庭への支援です。
どちらかというと働く親への支援で、子ども自身への支援ではありませんよね。
「こんな支援をしているんだ」「助かる!」「仕事が続けられる~」
そう思う反面…「子どもは仕事の邪魔と言っているも同然?」「私って何のために働いてるんだっけ…」という思いが頭をよぎることもしばしば。
私も共働き家庭の親の1人として、普段は割り切って働いているつもりですが、便利な制度を利用するときには、子どもに申し訳ないような思いを拭い切れないときがあります。
小1の壁、乗り越える?あきらめる?何が正解?
このような気持ちは、小1の壁を乗り越えるのをあきらめる理由になるでしょう。物理的な理由より、精神的なしんどさが、退職を後押しするケースの方が多いかもしれません。
「それでも…」と、小1の壁を越えて働き続けたとしても、子どもが不登校になったり、学校でトラブルに巻き込まれたりしたら、自分を責めてしまうのではないでしょうか。
選択肢はたくさんあります。でも、正解はありません。しいて言えば、親と子ども、家庭を取り巻く環境によって、導き出される正解は、それぞれ異なるはずです。
その選択が自分たちにとってどうだったのか。正解といえるのか。それは、子どもが大きくなって、後から考えたときにしか、わからないのかもしれません。
小学校入学は社会参加への最初の一歩
私が思うのは、小学校入学は、子どもたちが社会の中で生きる第一歩だということです。学校に通い始めた子どもたちは、家族以外のさまざまな人たちと関わり始めます。
「守ってくれる大人は親だけじゃない」ということを学ぶのも、小学校でできる大切な勉強の1つなのではないかと思うのです。
もちろん、親としてすべきこと、親にしかできないこともあります。でも、小学校に上がると、子どもが家庭で過ごす時間が減り、親にできることが限られてくるのも事実です。
子どもが外で過ごす間、子どもを見守っているのは親以外の大人たちです。
いずれ社会に出る子どもが、小さいころからさまざまな大人と信頼関係を築き、その安心や大切さを知る機会や経験は、多ければ多いほどいいのではないでしょうか。
教育現場で働くからこそ見えるもの
…という風に思ったのは、先日、勤務先の卒業式で、ある光景を目にしたからです。
それは、週に一度行われる地域ボランティアによる活動に、6年間参加し続けた児童が、ボランティアの女性の声掛けに、号泣しながら応えていた様子です。
あの涙は、2人がかけがえのない関係性を築いていた証でしょう。親の知らないところで、子どもは周りの人々と深い関係性を築き、安心できる居場所で過ごしていたのです。
もちろん、そこに悪い大人が紛れ込んでいる可能性は否定できません。嫌なニュースは、連日職員室でも共有されますし、我が家でもトラブルに巻き込まれた経験があります。
でも、私が知る限り、教育現場で働くほとんど全ての人が、真に子どもの成長だけを願い、大変な環境・状況の中で日々働いています。
教育現場で働いているからこそ、大切な子どもの居場所を増やしてあげるのも、家庭や親にとって「正解」といえる選択ではないかと思うのです。
【参考】
■日本総研「事業所内「学童保育」の可能性」
■オトナンサー「仕事&育児の両立が困難…「小1の壁」どう乗り越える? 共働き夫婦が今からできる“3つの備え”とは【教育のプロが解説】」
■講談社コクリコ「「小1の壁」で働き方はどう変わる? 退職や時短勤務を選んだママたちの実態調査」
■品川区「朝の児童の居場所確保事業」
■子どもキャリア「【朝の小1の壁とは】各自治体が取り組む「小学生の朝の居場所づくり」」
■民間学童保育ウィズダムアカデミー「小1の壁とは?共働き家庭が直面する原因と今すぐできる6つの対策」