「子どもの有無による女性同士の対立・断絶」は誰のせい?後編【マクロな視点編】

「子どもの有無による女性同士の対立・断絶」は誰のせい?後編【マクロな視点編】

「子どもの有無による女性同士の対立・断絶」は誰のせい?後編【マクロな視点編】フリーライターの小林なつめです。

前編では、ミクロな視点から、子どもの有無による女性の対立・断絶について考えました。ここでは、マクロな視点で、子なし/子あり女性の対立を見ていきましょう。

←←「子どもの有無による女性同士の対立・断絶」は誰のせい?【ミクロな視点編】

大きな視点で子なしと子ありの対立を見たとき、私は、その原因は、主に以下の2つあるのではないかと考えました。

1.子どものいる世帯の割合の低さ

2.労働者としての在り方

 

今や子どものいる世帯は2割以下で「レア」

まず1つ目は、少子化の影響で子どもの数が減り、子どものいる世帯が少なくなったこと。

1986年には半数近い世帯に子どもがいたのに対し、直近2024年の調査では、子どものいる世帯は、たった16.6%と、全世帯の2割以下という現状があります。

(出典:厚生労働省「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況 .pdf」)

 

今や、子あり世帯はスタンダードではありません

むしろ、マイノリティ側、レアな存在だとすら言えるでしょう。

「子持ち様」論争からもわかる通り、今や子どもは「ぜいたく品」以外の何物でもなく、子ありは社会に精査され、叩かれる対象とみなされている節があります。

私を含め、子あり世帯の親たちの多くが、周りからの視線に肩身が狭い思いをしながら、子どもを育てているのではないでしょうか。

一方、2020年の調査では、日本人女性の「生涯無子率」は27%と、約3割。2005年には12%だった数値が、15年で約15%上昇しています。

(出典:日本経済新聞「生涯子供なし、日本突出 50歳女性の27%」)

 

独身、あるいは子なしで働く女性が増えたこと、またSNSなどの台頭により、これまではものをいう権利すら与えられなかった「子なし」の女性たちが意見を言えるようになり、彼女たちの意見が表面化されたという見方もできます。

そう考えたら、子どもの有無による女性同士の対立や断絶が可視化されている今の状況も、一概に「悪いこと」と決めつける必要はないのかもしれません。

 

実際のところ、個人がいがみ合う必要はあるのか?

2つ目に考えられるのは、社会的視点から見る、私たちの働き方→「働かせられ方」、つまり労働者としての在り方です。

例えば、前編の冒頭に2つ挙げたポストでは、「子なしが子ありの尻拭いをさせられる」実情が挙げられていましたが、これは実際のところ、個人の責任ではありませんよね。

子どもを優先する子ありに、子ありの尻拭いをさせられて愚痴る子なし…どちらも悪くはありません。

どちらも普通の行動を取り、結果としての感情や感覚を伝えているだけなのに、双方に、必要以上に負の感情が生じてしまっているように思えます。

こういった問題が起きる根本的な原因は、子どものいる世帯をフォローする体制を整えていない会社、ひいては社会の構造や制度にあります。

しかし、それに気付いている人はあまりいません。

これは自分の責任は自分で取るべきだという「個人責任論」的な考え方や「社会や政治のせいにするのは無責任」という風潮に基づいているのかもしれません。

だからといって、特定の属性たる誰かを攻撃したり、傷つけあったりしても、お互いに疲弊するだけで、非生産的なことこの上ないのですが…。

子なしと子ありの対立や断絶は、今の状況に深入りしたくない、そのまま「自己責任」ということにしておきたい、会社や国、社会にとって、好都合な状況になってしまっているようにも見えます。

 

長時間労働と家事・育児の両立はムリゲーすぎる

そもそも…8時間×5日間の労働に励みつつ、日本式の家事・育児をこなす労力は、並大抵じゃありません。夫婦2人で取り組んでも、追いつかないくらいです。

それなのに、仕事と家事育児のワンオペを強いられている女性が、日本には大勢います。社会全体が、子ありの女性1人ひとりに、負担を押し付けすぎているのです。

まずは「働かせられ方」こそ見直すべきで、本来、子ありの会社や周りの人間(子あり側の会社や同僚)だけで、子ありをフォローする必要はないはずです。

「自助・共助」ではどうにもならない現状は、社会の仕組みを見直す「公助」で変えるしかありません。

ひとまずは、全体の労働時間や働き方の見直しが、手っ取り早いのではないでしょうか。もちろん、そう簡単に実行できることではなく、課題は山積みでしょう。

しかし、心強いことに、「働き方を変えたい」「変えよう」という世論は高まっていて、一部の自治体や会社では、すでに取り組みも始まりつつあります。

 

やはり「働かされ方」を変えるしかないのでは?

例えば最近よく耳にする「週休3日制」。週休を週3日とし、勤務日数を週4日とする制度です。※

日経新聞の「2025年読まれた記事」に選ばれた「Z世代、35%が週休3日希望 「無理せず・安定」に重き」では、Z世代の35%が週休3日希望だそう。そりゃそうですよね。

また、大手企業の佐川急便や日本マイクロソフト、ユニクロ、パナソニックなどでは、すでに週休3日制の働き方を導入済みです。

自治体でも、2025年2月時点で、現状16都府県がすでに導入済みか、導入予定。最近では、2026年1月から、宮城県でも実施が始まったそうです。

ほかにも多様な働き方として、「短時間正社員制度」などもあります。

※運営方法は会社や自治体によるため、給与や勤務時間を変更するパターンもあります。


子どもの有無を含む、ライフスタイルの違いによって生じる、女性同士の対立や断絶。

でも、こういう事態が起きるようになったのは、多様化が進む現代だからこそとも言え、その全てが「悪」というわけではありません。

そもそもどちらの主張も、どんな意見も、悪くも、間違ってもいないのです。

ただ、彼女たちそれぞれの立場が、生活が、働き方が、そこから生まれる価値観が、違うというだけのこと。人がみんな「違う」のは、当たり前のことですよね。

それでももっと平和に、楽しく暮らし、働いていくために、私たちにできることは、まず「働かせられ方」を見直し、声を上げることではないでしょうか。

 

【参考】

■労働政策研究・研修機構(JILPT)「児童のいる世帯(ちょっと気になるデータ:ビジネス・レーバー・トレンド 2024年10月号)」
■東洋経済オンライン「日本で「子持ち様」論争が過熱する根本原因 敵は出産の可能性がある女性ではない」
■MS-Japan「週休3日制・週休4日制を導入している大手企業10選
■パーソルクロステクノロジー「週休3日制とは?いつから義務化される?給料は減る?メリットと導入事例を徹底解説」
■朝日新聞「職員の週休3日制、16都府県が導入済み・予定 柔軟な働き方広がる」
■ミヤテレNEWS NNN「宮城県が全職員対象に”選択的週休3日制” 2026年度から導入へ「通勤時間が1日分減るのはありがたい」(2024年10月30日掲載)」
『ノンママという生き方』香山 リカ著 幻冬舎 2016.7

 

育児×キャリア シリーズカテゴリの最新記事