男性が育休を取る大きな意義のひとつ「マイノリティになる経験をすること」かも!

男性が育休を取る大きな意義のひとつ「マイノリティになる経験をすること」かも!

男性が育休を取る大きな意義のひとつ「マイノリティになる経験をすること」かも!

フリーライターの小林なつめです。

 

私はライター業を再開してから、今年で5年目です。2024年度からは、学校司書として働くようになりましたが、副業としてライターの仕事も続けています。

ライターの仕事は、PC1台あればどこでもいつでもできるところが魅力です。

一方で、ライターになると、常に締め切りとの戦いが待っています。私の場合、今はだいぶ仕事を減らしましたが、それでも月に4、5回の締め切りが訪れます。

基本的には家族が寝ている夜や早朝に仕事をしているのですが、スケジュール調整がうまくいかないと、休日の日中も仕事をしなければならなくなります。

そんなときには、夫に家事や育児を任せて、仕事をします。

でも…キッチンで弁当を作ったり、リビングで洗濯物を干したりしている夫を横目に仕事をするのは、何とも肩身の狭い気持ちです。

仕事は、夜中や朝方に一人でこそこそやる方が、いっそ気が楽なのは、私にも「男は仕事、女は家事・育児」の刷り込みがあって「夫に家事をさせて、自分だけ仕事をするのは申し訳ない」という気持ちになってしまうからでしょう。

我が家の懐事情はというと、副業の甲斐あって、私の収入は夫と変わらないか、月によっては夫の収入を超えることもあります。

そして、この事実もまた、夫に対して何となく申し訳ないような…でも誇らしいような気持ちにもさせるのです。

 

 

妻の海外赴任に帯同する「駐在夫」たち

最近、『妻に稼がれる夫のジレンマ』という、衝撃的なタイトルの本を読みました。

本の内容は、日本で共働きしていた夫婦で、妻の海外赴任についていく「駐在夫」となった男性たちへのインタビュー調査が中心です。

「葛藤の末、駐夫に転じる」決断をした彼らのうち、10人に7人は主夫となり、一時的にではあっても、仕事やキャリアを失い、「男から降りた自分に呆然」とする事態に陥ります。

日本社会では、男性社会人という堂々たるマジョリティだった彼らは、異国で家事や育児を担当するアジア系男性という、れっきとした「マイノリティに転じて」ショックを受け、苦悩したといいます。

駐夫の1人、藤原さんは、「自分が社会のお荷物になったっていう経験を得られたことが大きくて…自分が社会的弱者になったっていうのがショック誰かに迷惑を掛けないと生きられないような存在になってしまった…」と語っています。

 

 

妊娠~育児経験のある女性たちのつらさ

でもこれ、妊娠中の女性、産後の女性、乳幼児を育てる女性なら、誰もが経験した感覚、痛みではないでしょうか。少なくとも私には、身に覚えがあるのです。

この感覚は、日本で社会人をしている男性(≒絶対的マジョリティ)には、到底得られないものです。こんな苦悩、大多数の男性が、経験したいとは思わないでしょう。

それでも私は「女性はみんなしている経験」だからこそ、身をもって知ってほしいと思うのです。

実際、マイノリティ側の経験をすることは、稀有で貴重な経験です。日本に住んでいても、まだまだ少数派の男性育休を取れば、マイノリティになる経験ができるかもしれません。

 

新しいドラマにも育休中のエリートパパが登場

2025年4月に始まったドラマ「対岸の家事~これが、私の生きる道!~」第2回のエピソードでは、育休中のエリート官僚・中谷が、まさにこの経験をする回想シーンがありました。

「働いている方が楽だった。2ヵ月前までは、家事がこんなに大変だなんて考えたこともなかった。…幼児と2人きりの日々に、精神が蝕まれていく…育休を取ってからの毎日は、同じことの繰り返しで、何一つ進んでいる感じがしない…誰かと話せたら少し楽になるかもしれない、誰でもいい、誰かと話したい。でも昼間の街には誰もいない。居場所すらないなんて、知らなかった。」

 

夫婦の関係性を重視するなら「男性育休」を!

こんな風に思う中谷のママ友は、「対岸の家事」の主人公・詩穂です。

詩穂は現代社会では少数派になりつつある専業主婦で、ときに肩身の狭い思いをしながらも、子どもを愛情深く育てています。

ドラマの最後のシーンでは、詩穂が夫に「奥さんが専業主婦でかわいそうって言われたことある?」「私が専業主婦だから、肩身の狭い思いをしてるんじゃないかなって」と話します。

それに対して夫は「詩穂だってちゃんと働いてるだろ?」「俺の給料はさ、2人で稼いでるようなもんじゃん」と返していました。

重要なのは、妻が仕事をしていない事実ではなく、夫婦の価値観や考え方、関係性や対等さなのでしょう。

もし「妻とフェアな関係でいたい」「育児の喜びだけでなく、つらさも共有したい」と考えているのならば、「男性育休」を取ることを考えてみるのも、いいのではないでしょうか。

 

 

参考:『妻に稼がれる夫のジレンマ共働き夫婦の性別役割意識をめぐって』小西 一禎/著 筑摩書房 2024.1

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