フリーライターの小林なつめです。
【目次】 ●「やらないこと」について考える ● 日本の女性は家事をやりすぎている ● いくらなんでも「やりすぎ」な女性の家事 ● 女性の家事のやりすぎは、夫の生き方にも悪影響を及ぼす □【参考】 |
タイトルにあるように、今回は「やらない」ことについて考えたいと思います。
「やらない」という選択について、あなたはどんな印象を受けますか?どちらかというとネガティブな印象を抱く方のほうが、多いのではないでしょうか。
私も同じですが、日本では特に、積極的に「やる」姿勢のほうが高評価で、あえて「やらない」ことを選択する行為は、評価を受けにくい傾向にあるからです。
「やらない」ことに対して、消極的、受け身、チャレンジ精神に欠ける…ようなイメージを持っていませんか?
日本の女性は家事をやりすぎている
でも、時には「やらない」選択をすることがポジティブに作用することがあります。
その1つが、女性の家事・育児です。
家事への取り組み方については、以前「どうすれば家事の分担がうまくいく?「家事は面倒なもの」だというバーゲニング理論」の記事でもふれました。
とにかく、日本の女性は家事・育児をやりすぎる。入れ込みやすい傾向にあります。
「家事をちゃんとすること」は絶対的正義で、「丁寧な暮らし」こそが理想。毎日の炊事・洗濯はもちろん、片付け、掃除もマスト…でも時間は限られている。
このジレンマに囚われた結果か、OECDや厚労省の調査にでは、日本人女性の睡眠時間は、先進国の中でも最も短いという調査結果も出ています。
日本の女性は家事をやりすぎていて、もはや自分の存在意義として、手放せなくなっているのではないかとすら感じてしまいます。
実際、SNSを見ていると「やりすぎ案件」をよく目にします。
中でも私が「やりすぎ」どころか「やらないでほしい」「やっちゃだめ」だと思うNo.1が、自分が出産で入院するときの、夫の食事の用意です。
出産は、女性が命を懸けて臨む、人生の一大事です。
出産前にはお腹が重くて動きづらく、体調が優れない方も少なくありません。体が大きく変化しているのだから、当たり前のことです。
それなのに、自分が出産~入院中の夫の食事を作り置き、冷凍しておくなんて…絶対にする必要はありません。むしろ、してはいけない行為とさえいえます。
もしそれをやってしまったらどうなるか…夫は、「妻はいついかなる時でも自分に食事を用意すべき存在だ」という思いを、強固なものとするでしょう。
結果、産後に女性自身が苦しむことになるのです。
信じられないことに、数年前まで、妊婦向けの雑誌やメディアでは「入院中に家族の食事を作り置く方法」のような記事が掲載され、普通に受け入れられていたようです。
しかし、近年ではやっと、風向きが変わってきたようで、安心しています。
女性の家事のやりすぎは、夫の生き方にも悪影響を及ぼす
たとえ専業主婦でも、あまり夫の世話を焼きすぎてはいけません。やればやるほど、夫は「家事は自分の仕事ではない」と考え、家事をしなくなります。
恐ろしいことに、夫の認識が、妻の死後も変わらないことさえあります。そうなると最悪、夫のセルフネグレクトや孤独死を助長してしまいます。
実際、2022年の「第7回孤独死現状レポート」によると、孤独死の男女比はおよそ8:2と、圧倒的に男性が多い傾向にあります。
「夫のために」やっているつもりのアレコレが、夫を不幸に陥れるかもしれません。
家事について、女性はポジティブに「やらない」という選択肢を持つべきでしょう。
■『「家事のしすぎ」が日本を滅ぼす ( 光文社新書 917 )』佐光 紀子著 光文社 2017.11
■ 「家事をきちんと」日本人を悩ませまくる呪縛 なぜ夫が全然手伝わない社会になったのか | 家庭 | 東洋経済オンライン
■ 日本人は「睡眠不足」 女性の4割が睡眠6時間未満 先進国で最下位:朝日新聞デジタル
■ <ダンナの世話をどこまでする?>妻の出産入院中に食べるご飯。用意する?しない? – モデルプレス